7月21日から27日まで、マダガスカル共和国とモーリシャス共和国を訪問しました。
アフリカへの出張は、昨年8月のケニア、本年1月のウガンダ、ザンビア、本年5月のガーナに続き4回目となります。今次出張の目的は、これまでの出張と同様、我が国が提唱する「質の高いインフラ投資」への理解を促進するとともに、本邦インフラ関連企業の現地進出を支援することです。アフリカインフラ協議会(JAIDA)会員企業31社約70名の方々にご同行いただきました。
21日深夜に羽田を出発し、ドバイ、モーリシャスで乗り継ぎをし、マダガスカルの首都アンタナナリボに到着したのは現地時間22日夜、27時間後でした。
翌23日早朝、再び飛行機に乗り、日帰りでマダガスカル最大の港であるトアマシナ港を視察いたしました。昨年8月のTICADⅥの際に、安倍総理がマダガスカルのラジャオナリマンピアニナ大統領と会談し、トアマシナ港拡張計画に対して約452億円の円借款を供与する方針を表明されました。
トアマシナ港の視察に際して記念撮影
これを受けて本年3月、円借款事業の交換公文、借款契約が行われたところです。したがいまして、日本企業による本事業の受注が、目下最大の課題であります。同行いただいた日本企業の皆様と船上からトアマシナ港全体を確認した後、エディ・トアマシナ港湾公社総裁と面会・意見交換を行いました。
同日午後には住友商事の手がける世界最大級のニッケル・コバルト地金一貫生産事業、「アンバトビープロジェクト」を視察させていただきました。マダガスカル全体の貨物取扱量の約9割がトアマシナ港です。アンバトビープロジェクトはトアマシナ港の最大の利用者であり、マダガスカル輸出総額の31%を占める国家プロジェクトです。マダガスカルの経済発展のためには、トアマシナ港の拡張が焦眉の課題であるといえます。
ニッケル等精錬工場の視察では、敷地内が清潔で整理されている印象を受けました。また、安全対策に取り組んでおり、ここ数年で事故が1件しか発生していないとのご説明をいただきました。周辺住民に対する情報提供、地元への貢献事業など環境対策・CSRにも力を入れているとのことです。
国民1人当たりGDPが約400ドルである中、現場従業員でも月収数百ドルということですので、現地雇用に対する給与・福利厚生面の待遇はたいへん手厚いものがあります。マダガスカルの経済社会に対する責任感をしっかりとお持ちになられていると感じました。
24日は、ラフィディマナナ大統領プロジェクト・国土整備・設備担当大統領府付大臣、ラマナンツア運輸・気象大臣、ラザフィマンディンビ公共事業大臣、ラスルエリソン水利・エネルギー大臣と会談を行いました。
ラフィディマナナ大統領府付大臣らと
その後、今回の出張の目玉である「日・マダガスカル官民インフラ会議」を開催いたしました。先方4閣僚との間で「質の高いインフラ投資」推進協力に係る覚書に署名し、今後、実務者レベルの定期的な意見交換の枠組みである「質の高いインフラ対話」(QID)を立ち上げることで合意いたしました。
マダガスカルと「質の高いインフラ投資」推進協力に係る覚書に署名
また、午後のワークショップでは、日・マダガスカル双方の出席者の間で活発な質疑応答、意見交換が行われたとうかがっております。
25日には、大統領官邸にてラジャオナリマンピアニナ大統領を表敬訪問いたしました。大統領はたいへん気さくなお人柄で、同行した日本企業幹部の方々との写真撮影にも快く応じてくださいました。また、大統領官邸と中心市街地を結ぶバイパス道路は日本のODAで造られたものであるため、日々、日本のことを思い出していると仰っていました。
私からは、今回のマダガスカル訪問の成果をご報告するとともに、前日の視察の際、船上から眺めたトアマシナ港は貴国の国土面積と比していかにも小さいので拡張が急務であると感じた旨を大統領に申し上げました。大統領は、乗船視察のことは御存知なかったらしく、少し意外そうになさっていましたが、私の考えに同意していただけました。
同日夜、アンタナナリボを出発し、モーリシャスに移動しました。モーリシャス共和国は、東京都と大体同じ面積(2,045平方キロメートル)の島に人口126万人が住む島嶼国家です。アフリカ有数の高中所得国であり、1人当たりGDPは9,000ドル超、道路に信号が一つもないマダガスカルとはうって変わり、きれいに整備された高速道路や空港が印象的でした。国民の70%の旧母国であるインドとの関係が深く、最近もインドが数百億円規模のODAを行っているとのことでした。
翌26日午前中、クンジュー海洋経済・海運大臣への表敬訪問に続いてボダ公共インフラ・陸運大臣、ラチュミンアライドゥ外務大臣とのバイ会談を行いました後、インフラ分野における協力覚書に署名いたしました。ボダ大臣はボリウッドスターのような格好良い方で、経済分野にたいへん明るい方であるという印象を受けました。
モーリシャスとインフラ分野における協力覚書に署名
右はボダ公共インフラ・陸運大臣
同日午後には、日本のODA案件である気象レーダー施設の工事現場を視察いたしました。あいにくの雨天ではありましたが、清水建設の谷本プロジェクトマネジャー以下、モーリシャス人、フィリピン人、シンガポール人、ザンビア人という多国籍の体制で頑張っている現場の皆様を激励させていただきました。
今回の出張も、日数の割にタイトなスケジュールでしたが、無事、マダガスカルとモーリシャスでそれぞれ成果を上げることができました。いずれも日本からは遠く離れた国ですが、百聞は一見に如かず、たいへん印象に残る国でした。
マダガスカルは、日本の1.6倍という広大な国土、豊かな自然と天然資源に恵まれており、市井の人々は総じて若く、貧しくもどこか希望に満ちたような明るい表情をされているのが印象的でした。近年は比較的政情も安定し、治安も悪くないとのことですので、今後、インフラ整備が進むと一気に発展する可能性を秘めている国だと思いました。
モーリシャスも、元々は砂糖と繊維産業が主要産業でしたが、2006年より経済構造の転換に向けて政府主導で国内経済改革に取組み、観光産業に加えてIT産業への投資や国際金融センターの設置等を熱心に進めているそうです。東南アジアにおけるシンガポールと同様、アフリカ大陸へのゲートウェイ、投資拠点となることを目指しているとのことでした。アフリカ大陸の発展と共に更なる経済発展の可能性を秘めているといえます。
我が国は、インフラ輸出等を通じてこうした国々の発展に貢献するとともに、時期を逃さずにその成長の勢いを取り組んでいくことが大切であると思います。
最後に余談ですが、今回の出張では、小笠原一郎・駐マダガスカル(兼コモロ、兼モーリシャス)大使に全行程を同行いただくなど大変お世話になりました。小笠原大使とは以前にも私が参議院の外交防衛委員長を務めていた際に外務省の国会担当参事官として一緒に仕事をさせていただいた間柄ではありますが、異国の地でも変わらずにご活躍なさっておられたので安心いたしました。引き続きのご活躍を期待いたしたいと思います。
小笠原一郎・駐マダガスカル大使と