まず、仙台から東松島市に入りまして、「小野市民センター」において鳴瀬川の河口部復旧・復興事業完成式に出席し、ご挨拶をさせていただきました。
その後、鳴瀬川河口部の事業箇所を視察させていただきました。同事業は、堤防整備総延長6.6km、水門1基等を内容とする総事業費約180億円の東日本大震災復旧復興事業です。計画堤防高は被災前よりも1m高い7.2mとなっております。鳴瀬川河口部(右岸)の野蒜水門は、北上川と阿武隈川を結ぶ日本一長い運河(北上運河~東名運河~貞山運河、全長49km)の中にあり、浸水被害の防止や船舶の航路として重要な役割を果たすものです。
鳴瀬川河口部の事業箇所を視察させていただきました
また、特別名勝「松島」の保護地区に位置していることから、水門や管理棟は周辺環境に配慮した煉瓦張りとなっております。煉瓦ブロックには、地域復興を願う多くの方々のメッセージが記されているとのことでしたので、私も一筆したためさせていただきました。
私からもメッセージをお贈りさせていただきました
次に、石巻市へ移動しまして、「河北総合センター」において北上川の河口部復旧・復興事業完成式に出席し、ご挨拶をさせていただきました。
式典終了後は、北上川河口部(右岸)の長面(ながつら)堤防を視察させていただきました。北上川河口部では地震と津波により堤防等に甚大な被害が発生しました。特に長面地区は陸地一帯が湛水状態となり、罹災者捜索が難航いたしました。
厳しい気象環境の下、水防地への築造となる堤防復旧は困難を極めましたが、宮城県の農地復旧、海岸堤防復旧と調整、連携しながら復旧・整備を進めてまいりました。同事業は、堤防整備総延長17.9km、水門3基等を内容とする総事業費約644億円の東日本大震災復旧復興事業です。
視察の際にご説明いただいた内容のうち、堤防の性質に関するお話がとりわけ印象に残っております。河川堤防は、その重量と高さによって水害発生を防いでおり、堤防の表面がコンクリートブロック張りとなっているのは水による浸食を防ぐためです。
河川に面した堤外のみならず、頂部と堤内を「三面張り」にすること、コンクリートブロック自体を通常よりも大きく、重くすることによって、津波によって越水が生じた場合でも堤防がめくれ上がりづらくなり、越水の規模や速度を抑える効果が期待されるとのことです。
こうした「粘り強い」堤防は、津波から避難する時間を少しでも長く稼ごうという発想に基づいて設計・整備されていること、住民避難に関するソフト施策とあいまって防災減災に寄与するものであると理解いたしました。
北上川河口部の視察の様子
今回の式典出席と視察には、東北地方整備局の川瀧局長、畠山河川部長、国土交通省本省水管理・国土保全局の泊治水課長他にご同行いただき、視察の際には堤防事業について丁寧なご説明をいただきました。
また、鳴瀬川、北上川の両式典には、ご地元の国会議員である安住淳議員、井上義久議員、勝沼栄明議員、和田政宗議員、中野正志議員、高橋千鶴子議員(北上川の式典のみ)が超党派でご列席いただいた他、宮城県議会長、東松島市、石巻市両市の市長、市議会議長始めご地元の関係者の方々が多数ご出席なさいました。
鳴瀬川河口部復旧・復興事業完成式典にて
東日本大震災からの復興は今後も長い道のりが続くことと思いますが、震災復興に向けた取組みの節目ごとに今回のような式典を開催し、震災復興の必要性、重要性を広く社会に喚起し続けていくことはたいへん大切であると思います。私も国土交通副大臣、復興副大臣として、東北の皆様に寄り添いまして、東日本大震災からの復旧・復興事業にしっかりと取り組んでまいる所存です。
以下、ご参考まで、私の挨拶全文(石巻市の式典)です。
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ご紹介いただきました国土交通副大臣をつとめております末松信介でございます。兵庫県選出で神戸市の出身です。本日大勢の国会議員の皆様、亀山市長、県市議会の皆様もご出席されておられます。また本日は、ここに国交省から川瀧東北地方整備局長、畠山河川部長、本省からは泊治水課長が参っております。
本日ここに北上川河口部復旧・復興事業完成式典を行うことが出来ました。ここにお集まりいただきました皆様のご支援、ご協力に厚く御礼申し上げます。まず平成23年3月11日に発災しました東日本大震災により多くの尊い人命が失われましたことに対しまして、心よりお悔み申し上げますと共に、被災されました皆様に謹んでお見舞いを申し上げます。
3月11日、あの日は金曜日でした。午後2時50分の新幹線で、地元神戸の会合に出席するため、車内で出発を待っておりました。
すると、車体が突然大きくバウンドして、地震が起こったということが分かりました。電車の上の架線が大きく揺れているのを見て、それも大規模な地震であると思いました。新幹線が発車できないということが分かり、東京駅の日本橋出口に出てゆきました。
そこには、何百人もの人がいて、駅を囲んでいる高層ビルが左右に何mも揺れ動いているのを、驚きとともに、じっと心配そうに見ておられました。建物の免震構造により、大きな被害はでなかったわけですが、その時は、その何十分後かに、東北地方の沿岸を大津波が襲うことになるなど、想像だにしておりませんでした。津波の映像はいまだ衝撃的で、見ると胸が痛みます。
私は阪神淡路大震災を経験しました。住宅、ビルの倒壊により、その地震被害の跡を見て、恐怖感をおぼえました。
東日本大震災の発災から12日後の3月23日に、宮城県に来まして、仙台の高速道路上から沿岸線を見たとき、津波によるガレキの荒野に恐怖感を越えて、体全体から力が抜け落ち、強い虚脱感を覚えたことを記憶しております。
夜遅く石巻市役所に行き、そこで到着したばかりの兵庫県職員と会うことが出来、激励いたしました。
あの悲しみの出発から、地元の皆様の苦闘が始まりました。
あれから6年、そこから立ち上がって復興計画を策定され、地域一丸となって復興を成し遂げようと、力を尽くされている皆様に改めて敬意を表する次第です。
ご承知の通り、日本は自然災害に対して、極めて脆弱な国土条件にあり、毎年のように、水害、土砂災害を繰り返しております。
ここ北上川では、東日本大震災により、最大震度6強の地震が発生し、大津波により、約40㎞に及ぶ堤防の被災、釜谷(かまや)水門の流失など、流域一帯が甚大な被害に見舞われました。
これに対し、国土交通省では、最初の洪水期(こうずいき)を迎える6月までに応急復旧を完了させました。
その後、平成24年3月から本格復旧、復興工事に着手しました。そしてこの度、河口部のおよそ9割の堤防復旧・整備が完了し、残る区間も平成29年度中に完成する目処がついたことから、間もなく震災から6年を迎える本日、完成式を執り行うこととなりました。
このように完成式を迎えることが出来ましたのも、多くの関係者の皆様、とりわけ貴重な用地をご提供いただきました地権者など地元の皆様、工事に携われた皆様の深いご理解、ご協力によるものと、心から感謝申し上げます。
私は常々、国土交通省の所管する公共事業には2種類あると考えております。一つは、富を生み出す、攻めの公共事業、もう一つは、国民の生命財産を守る、守りの公共事業です。どちらも大切です。しかし、安心して生きていればこそ、豊かさを実感できます。
この北上川堤防の完成が、人々の生命財産を守り、復興の実感につながると共に、この水辺が震災前のように、皆様方に利用され、親しまれる空間となりますことを期待致しております。
最後に、被災地の一日も早い復興と、本日ご臨席の皆様方の益々のご健勝を心より祈念申しあげまして、ご挨拶とさせて頂きます。
平成29年2月25日 国土交通副大臣 末松 信介