活動報告

2016-12-10
JR常磐線運転再開、宮城県南部被災地を視察

 12月10日、福島県新地町で行われましたJR常磐線(相馬~浜吉田間)運転再開記念式典に安倍総理、今村復興大臣他と共に出席し、その後、宮城県南部の復興状況を視察いたしました。
 
 JR常磐線は、地震及び津波により、延長約15kmにも及ぶ線路の流失、駅舎の損壊等の被害を受けました。特に、海岸部に近接する亘理駅~新地駅間においては、津波により、新地駅構内に停車していた列車がレールごと押し流され、車両も大きく損壊するなど甚大な被害を受けました。
 
 復旧にあたっては、沿岸部の鉄道のみならず、鉄道沿線地域も大きく被災したため、まちづくりと一体となった復旧計画(駅位置やルートの変更等)の策定が必要とされました。そのため、常磐線については、復旧可能な区間から順次運転を再開することとなりました。
 
 市街地が壊滅しているエリアについては、国や県、市、町、JR東日本から構成される「JR常磐線復興調整会議」(事務局:国土交通省東北運輸局)において、地域全体の復興や「まちづくり」計画との整合を図りつつ、関係機関が協議しながら復旧を進めてまいりました。
 
 今回開通したJR常磐線の区間は、山側へ1.1km移設されており、移設された新地駅、坂元駅、山下駅の3駅の周辺では、今後、住宅や公共施設等が整備され、駅を中心とした新しい市街地が形成される予定です。
 

山側に移設された新駅
 
 式典の開会が始まる直前、加藤憲郎・新地町長が、壇上でこみ上げる涙を拭っておられる姿が印象的でした。新地町の復興において最大の懸案事項の一つでありましたJR常磐線の運転再開、新地駅のオープンという記念すべき日を迎えるまで、ひとかたならぬご苦労があったとお察しいたしますので、喜びもひとしおであったのではないかと思います。
 
 安倍総理がご到着された後、テープカット、くす玉割り、駅長への花束贈呈等のイベントが行われまして、新地駅は大変な熱気と歓声に包まれました。JR常磐線開通に対する地元の方々の喜びと将来への期待を強く感じました。新駅の周辺のまちづくりは緒に就いたばかりです。私も国土交通副大臣として今後もサポートを継続してまいりたいと思います。
 

式典のテープカット、くす玉割りの様子
 

駅長への花束贈呈
 
 その後、武政功・宮城復興局長にご同行頂いて、宮城県南部の復興状況を視察いたしました。
 
 まず、亘理町荒浜地区において阿武隈川河口部の河川堤防の復旧状況を視察いたしました。同堤防は、地震や津波によって甚大な被害が発生し、復旧に当たっては困難を極めたとのことですが、現在では用地取得、堤防整備共に相当程度進捗している状況でした。
 
 その後、齋藤貞・亘理町長と菊池伸悦・宮城県漁業協同組合仙南支所委員長とお会いし、ご同行いただきました。同町は「はらこめし」やヒラメ・カレイの品質が高いことで有名です。震災後、国からの支援によって荒浜漁港の港湾施設や漁船、冷凍施設等の整備が進み、荒浜漁港の水揚げ高は震災以前の3倍に上る好漁であるとのご説明をいただきました。
 
 また、まちのにぎわいを取り戻すため、グループ補助金を活用して地域の店舗の集約などに取り組んでいるものの、商業施設等の誘致が課題となっているとのことでした。国としてどのようなサポートが可能か、検討していく必要があります。
 
 平成26年10月にオープンした「きずなぽーとわたり」は、産地直売施設、県漁協仙南支所、独立行政法人防災科学研究所の地震・津波の観測施設が入居している施設ですが、周辺施設と比べて高い建物になっており、津波避難タワーも兼用となっている点が印象的でした。
 
 名取市閖上地区では、閖上慰霊碑にて黙礼させていただいた後、丘上の神社にて山田司郎・名取市長から閖上地区の土地区画整理事業についてご説明を頂きました。同地区では震災当時約5,500人が居住していましたが、750名を超える方が犠牲になりました。
 

山田司郎・名取市長とともに閖上慰霊碑に黙礼
 
 現在は計画人口を2100人に縮小した形で、フレームで現地再建を進めているとのことでした。長年住み慣れたまちを縮小再建することをご決断するのはたいへん勇気の要ることです。閖上地区の住宅再建は比較的遅れていますので、引き続き、国のサポートが必要です。
 

市長から土地区画整理事業のご説明を頂く
 
 岩沼市では、仙台空港近くの千年希望の丘にて菊地啓夫・岩沼市長からご説明をいただきました。千年希望の丘は、津波の減衰、避難丘の機能を有しているのみならず、造成土の約7割を震災のがれきの再利用によって調達し、後世への記憶の伝承の意味も込めているとのことでした。
 
 また、同市ではグリーンツーリズムや農業体験のアグリツーリズムに取り組んでおり、修学旅行等でのツアー参加促進、連携する企業・団体の増加等を通じて新規雇用創出を目指しているとのことでした。こうした取り組みは兵庫県でも参考になるものと考えます。復興、さらにその先を見据えて精力的に取り組む岩沼市長の姿勢が印象的でした。
 
 この日は、東北地方では広範囲に降雪が見られ、粉雪が舞い、寒風吹きすさぶ中での視察となりましたが大変有意義でした。地域ごとに復興の進度も抱える課題も異なることを再認識しましたし、各地域の実情に応じてできるだけきめ細やかなサポートが必要であると感じました。私も国土交通副大臣、復興副大臣として、引き続き東北地方の復興支援にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。