活動報告

2013-10-03
北アメリカ(ワシントン、デトロイト、シカゴ)視察

9月21日~28日に、北アメリカのワシントン、デトロイト、シカゴに、財政・金融調査の視察に行って参りました。
同行したのは、二之湯智先生、山田俊男先生、公明党の山本香苗先生、民主党の風間直樹先生という超党派のメンバーでした。

 

 ワシントンでは、連邦議会の共和党のマケイン上院議員、マコウスキー上院議員にお会いし、ボーカス上院財政委員長のハーシュ首席補佐官、エメンドルフ議会予算局長、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル理事、、戦略国際問題研究所(CSIS)のセチェイニー日本部次長、佐々江駐米大使と面談しました。

ジョン・マケイン上院議員(共和党・アリゾナ州選出)とのやりとりを要約します。



 
(末松)昨年12月で日本の政治が2つ変わった。ひとつは長期政権の成立だ。もうひとつは誰が総理大臣になっても同じということがなくなった。安倍政権の政策は長期的な日本の行く末を見据えたものだ。
 日本を巡る安全保障では、尖閣諸島及び中国の問題を気にしている。これを踏まえて、我が国は新たな防衛大綱を決めようとしている。また、集団的自衛権は大きな議論のひとつとなっている。
 
(マケイン議員)集団的自衛権を認めるのは、憲法改正によってか、それとも憲法解釈で認めようとしているのか。
(末松)集団的自衛権の行使については、賛成派、慎重派、反対派がおられます。個人的には憲法改正によって集団的自衛権を認めるべきだと考えている。それぞれの議員にはいろいろな考えがあるだろうが、自分は憲法を改正して集団的自衛権を認めるべきだと思っている。12月末までにはひとつの結論が出ると思うが、まだ明確にできない。
 日本側としては、普天間移設は進めていかなければならないと思っている。そのために我が国は予算を計上している。
 
(マケイン議員)普天間移設のための仲井眞・沖縄県知事の決断はいつ行われるのか。
(末松)沖縄県知事として決断できるように、安倍総理は努力をしている。
 
(マケイン議員)私は、日本の友人として述べたい。米軍基地の再編が早く進められないことを恥ずかしく思っている。執行できる計画ができたものの、実際に動くまでに時間がかかりすぎている。常に在沖米軍が事件を起こす可能性は残っている。一刻も早く、この話は進めなければならない。私は、米軍基地再編が進まない「非」は日本側にあるとは思っていない。しっかりした計画を出してこなかった米国側に問題がある。キャンプ・シュワブをグアムに移転して、オーストラリアと訓練をしていくべきだ。
 
(議員団)私はケネディ新駐日大使の公聴会に出席してきた。その時に、マケイン議員が尖閣問題に言及していただいたことに感謝を申し上げる。
 中国は、中国海軍及び中国空軍の作戦区域・対米国防ラインである第一列島線を定め、さらに、中国海軍は、第二列島線を2020年までに完成させ、2040年までに西太平洋、インド洋で米海軍に対抗できる海軍を建設するとしている。これを考えれば、尖閣問題は日米にとって死活問題だ。米海兵隊が防衛のために自衛隊と協力すると考えていいのか。米側にはその意思が見えない。マケイン議員におかれては、米海兵隊が東シナ海を守る意思を示すように議会で働きかけて欲しい。
(マケイン議員)先日、私は日本を訪問して、その足で中国を訪問した。中国で「尖閣は日本のものだ」と述べたが残念な反応を受けた。尖閣は単なる島ではなく、東シナ海の実効支配を得られるかの要(かなめ)だ。日本は、尖閣の主権を放棄させようとする動きをする国に対して働きかけて欲しい。
 
(議員団)米軍のグアム移転が進まない限り、普天間移設や嘉手納基地移転が進まない。まず、米国の協力を求める。
(マケイン議員)協力することを約束する。それは重要な問題だ。防衛に関する法案が成立するように努力する。
 
(議員団)来年(2014年)には沖縄県知事選挙が実施される。決断のできる仲井眞知事が出馬するように努力したい。
 
(議員団)日米関係は重要との認識を持っている。TPP問題が日米関係を損なわないようにして欲しい。
(マケイン議員)わかった。中国が主張を強めれば強めるほど、日米関係の重要性は増す。今後は中国との緊張が想定される。
 友人としてお願いしたい。韓国と日本との間では自然な同盟関係が存在している。古傷をなくすには時間がかかる。しかし、それでも日韓では多くの交流、対話を図って欲しい。
(末松)韓国との関係は建設的でなければならないと理解している。

(マケイン議員)21世紀の日本の課題は対中国、対韓国ではない。日韓で対話が広がり、21世紀の将来志向、未来志向が築かれることを望む。韓国の朴大統領にも同じ話をした。
 私の父・祖父の名を取った米海軍のミサイル駆逐艦が、横須賀を母港としている。中国に対して、日米の共同体制が整うことを期待しているし、また、それは私の夢でもある。もちろん米国としての協力も行いたい。
 日本経済に明るい兆しが見えてきたことは嬉しい。
 “Next Big Project is TPP, right?”(次の大きな課題はTPPだよな!)



この会談の帰り際、パラシュートで湖に着水して、大勢のベトナム人に囲まれる一人の人物の写真が壁にかけられていました。
「このパラシュートで脱出した後、捕虜になったのが私だ」と、マケイン議員は写真の自分を指さしました。

1967年10月、発電所を襲撃しようとしたA-4Eスカイホーク攻撃機が、地対空ミサイルに襲撃されたそうです。マケイン議員は操縦士でした。
「いま、マケイン号という船が、ベトナムの船に寄港している。時代は移り変わっていったよ。」と、笑いながら語られました。

マケイン議員にとって、人生で一番忘れてはならない場面、戦後に入手した写真だと感じました。



つぎに、デトロイト市評議会のサウンティール議長より、デトロイトの財政破綻について、ヒアリングをおこないました。




(デトロイト側)日本では、財政健全化法はすべての市町村に適用されるのか。米国では各州がそれぞれの法律を持っていて、全国を一律にカバーする仕組みがない。
(末松)財政健全化法は北海道・夕張市の破綻がきっかけで制定された。同法では4つの基準に基づいて健全性が判断され、すべての市町村が適用対象とされる。

(議員団)デトロイト市の破綻原因が、退職した市職員の年金と医療費というのは、日本では考えられない。仕組みを教えて欲しい。
(デトロイト側)米国では、全体を網羅する全国的な年金制度、医療保険制度は存在しない。各州が地元の住民を守るために州法で制度を規定しているが、今日ではその州法自体が問われている。
 デトロイト市では当時繁栄を誇っていた頃に、市当局が民間企業と競合して優秀な人材を引き抜くために、厚遇した年金制度を設計した。そのために高い年金水準、医療費の負担なしで職員を採用した。例えば、5万ドル(500万円)の年間給与に対して116%を上乗せして、11万ドル(1,100万円)をひとりの職員に対して支払うことになる。州法で、市が職員の年金を負担することになっているので、市が破綻しても年金は支払い続けなければならない。
 州によっては、管轄する市が財政破綻する前に州から市を財政支援することがあるが、ミシガン州では財政破綻して初めて州が救済に乗り出す仕組みになっている。

(議員団)年金の財源は。
(デトロイト側)民間金融機関からの借入である。借金をするために、今後入ってくる税収を担保としている。現在は、ローン支払いの方が税収を上回っている。
 破産裁判所の審理の過程では、支給する年金額やヘルスケアコストを削減する方向で議論が進んでいる。

(議員団)先ほどの説明の中で、116%を上乗せして支払うという意味は。
(デトロイト側)年間給与100%として、年金・医療費負担分として116%を支払うと言うこと。現役職員1人が、退職した職員2.5人を支える構図になっている。オバマケアが実施されれば、医療保険は全国的な制度になるのでこういうことはなくなるのだが。

(議員団)1.対応が遅れた理由は。2.その責任は。3.市評議会としての再建策は。
(デトロイト側)市議会議員全員にその責任がある。デトロイトの繁栄に陰りが見え始めた1950年代以降、何十年にわたって年金や医療費の問題に手を付けてこなかった。予算の削減を試みなかった。さらに、連邦や州が支援してくれることもなかった。
 今は再建策として、いかなる行政サービスを継続するのか、停止するのか、あるいは外注するのか仕分けをしている。またIT化も遅れているのでITを積極的に導入している。給与支払い手続を正規職員が行い、1人の職員の支払い手続に65ドルのコストがかかっていたが、外注によって今では18ドルに削減できた。しかし、職員をリストラするにも資金がないのでリストラが進まない。

(議員団)連邦破産法第9章が認められれば、連邦からの財政支援を期待することができるのか。
(デトロイト側)連邦破産法第9章によって財政支援は期待できない。債務負担を縮減してくれるだけだ。
 しかし、連邦政府は助成金を出してくれる。今週末には、連邦政府から助成金について説明を受けることになっている。州からはコンサルティングを受けるだけであり、州からデトロイト市に回ってくる税収は10年前より1億7千万ドル減少している。

(末松)他の都市ではいかなる再建策を策定して、財政危機を乗り切ってきたのか。
(デトロイト側)1980年以降、約40の都市が財政破綻してきた。それらの市の再建計画の内容は、職員の給与削減、歳入の見直し、市の経営の効率化であった。ミシガン州では、州と市が一緒になって資材の共同購入やゴミの共同収集などを行ってきた。

(末松)財政再建のための新法制定は行われないのか。
(デトロイト側)デトロイト市の財政破綻申請はかつてないほどの巨額な規模なので、連邦政府や上院は様子を見ている。
 連邦破産法の申請の扱いは州ごとに異なっている。ミシガン州では市が破綻申請して破綻を認められた後に、初めて州が介入することになっている。

(議員団)1.市の職員に対する市民の反応は。2.年金は給与の何割か。3.医療費の自己負担割合は。4.年金は何年間支給され続けるか。
(デトロイト側)市職員の非効率性は多くの市民が認めている。しかし、デトロイトは労働組合運動が盛んであるので職員の高賃金を支持する人は多い。つまり、サービスの改善は望むが、市職員の給与カットには反対する市民が多い。
 年金支給に際しては、職種によって40ほどの協約が個別に存在する。例えば、警官の場合、30年働いて最後3年間を警察署長として勤めて退職するならば、最後の給料をベースに計算する。
 医療費の自己負担は1,2年前まではゼロで、薬を買うときに一部負担するだけだった。医療費の自己負担割合は2年前に2割負担、今年から3割負担としている。
 年金は全額支給されるのは62歳からで、平均寿命76歳として14年間支給し続ける。

(デトロイト側)私から質問させて欲しい。デトロイト市では人口流出でインフラ整備が困難となっている。日本ではいかがか。
(議員団)空洞化現象が続いていたが、最近は買い物や生活の利便性を求めて、都心回帰している。農村でも財政破綻がある。広域合併して困難な状況を乗り切ってきた。
(デトロイト側)ミシガン州政府も合併を指導している。一方、小さな町として分離して活性化を図ろうとする都市もある。しかし、全体としては分離よりも合併に向かうのではないか。

(デトロイト側)租税は国税だけか、地方ごとに税率が異なるのか。
(議員団)国税、都道府県税、市町村税があるが、実際にはほぼ全国一律の税負担だ。
 


最期に、シカゴでは、中村祐輔シカゴ大学教授と意見交換させて頂き、最先端のがん医療について教えて頂きました。

今回の視察では、財政・金融分野にのみにとどまらず、様々な分野でご活躍されている方々から、貴重なお時間をちょうだいし、
多くのことを教えて頂きました。

改めて、感謝申し上げますとともに、どうぞ今後ともご指導賜りたいと存じます。


                                                           
 
ワシントンにて行われていた、TPP首席交渉官会合に参加されていた渋江和久内閣審議官より、進捗状況の説明を受けました。


                         
                          

                           アーリントン墓地にて、献花を行いました。


                         
エルメンドルフ議会予算局長、サンシャイン議会予算局副局長より、アメリカにおける予算局の任務から、財政赤字、経済状況について、
今後の見通しなどのヒアリングを行いました。


                         
FRB(アメリカ連邦準備理事会)のパウエル理事との意見交換会を行いました。パウエル理事より、日本のアベノミクスについて、
「現在のところ、成功していると判断している。今後の成長戦略の可能性によって、将来的に、アベノミクスの成否がきまるだろう」
という趣旨の発言をもらいました。

 

                         
ブルース・ハーシュ上院財政委員会国際貿易担当首席補佐官と、意見交換をおこないました。

 

                         
マコウスキー上院議員と、エネルギー問題について、議論しました。天然ガス、再生エネルギーの今後について、詳しいお話をお伺いしました。