第177回国会が1月24日に始まりました。大不況を克服するための大事な国会であり、民主党政権も総額92.2兆円という昨年度とほぼ同額の大規模な予算案を提出しています。我々野党としては、その中身を追求していますが、民主党自らがすでにマニフェストが破綻したことを認めており、国民を裏切った政権の責任は重大と言えます。 また今国会は予算審議の他、消費税・社会保障の今後のあり方、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加の有無など、我が国の将来を決めるような大きな課題を審議することになっています。このように重要な国会ですが、政権能力について国民の信頼を失いつつある民主党には任せておけず、野党である我々自民党も、責任を自覚ししっかりと審議に加わっていきたいと考えています。 最近自民党の支持率は若干上がったようですが、これは敵失に助けられただけです。まだまだ足腰を鍛え直す必要があります。かつて我が国をリードした党としての意識に立ちかえり、さらなる研鑽を積んでまいります。 さて、今年の4月には、私の政治家としての原点である地方議会の統一選挙があります。地方の意見がこれまで以上に重視される時代になってきました。皆様には、選挙を通じて、率直に政治に関する地方の意見をぶつけていただきたいと願いますが、地方を政治の原点とする我々自民党へのご支援もよろしくお願い申し上げます。 今年の冬の寒さは、ことの他厳しいものがあります。しかし、やがて暖かい春がやって来るでしょう。我が国も近くこの低迷を脱出し、明るい季節を迎えることができると信じています。末松信介はそれまで懸命に頑張る覚悟ですのでよろしくお願いいたします。 すでにお知らせしていますが、私は国会で行政監視委員長のポストにあります。行政機関の怠慢や不正を監視する委員会ですが、最近の様々な事件をきっかけに、行政に対する国民の視線が厳しくなったことを踏まえ、新たな行政監視システムの必要性を感じています。以下が私の考え方です。 「国民主権に基づく新たな行政監視システムの構築に向けて」 参議院行政監視委員長 末松信介 ○事業仕分けとは何だったのか 民主党は、税金の無駄使いといらない事業をなくすことで、巨額の歳出削減・財源捻出が出来ると主張し、事業仕分けを行いました。しかし2011年度予算案では事業仕分けによる歳出削減・財源捻出効果は3.1兆円にとどまりました。 事業仕分けは、これまで一般に知られることのなかった霞ヶ関の仕事が公にされ、国民の政治への関心を高めたことなど評価できる点もあります。 しかし法律の根拠を欠いており、違憲論まで主張されるほどの重大な法律問題を抱えた政治ショーに終わったと言わざるを得ません。 ○本当に考えるべき事は何か なぜ事業牛分けが行われたのか、このことを改めて考えなければならないと思います。なぜなら、霞ヶ関の中央官庁には不公正な行政をなくし、税金を正しく使用させるためのコントロールの仕組みが元々あるからです。それは次の三つです。 1 総務省の行政評価。監視機能 2 会計検査院の会計検査機能 3 財務省の予算査定機能 これらは法律に基づく行政の内部統制機能であり、この三つの機能が十分に働いていれば、事業仕分けを行う必要はなかったはずなのです。 行政の内部統制機能がなぜ働かなかったのか、それを明らかにしなければ税金の無駄使いの問題は解決されません。事業仕分けを延々と続けることよりも、このことを考える方が重要であると、私は考えています。 ○行政の目的は「公共の利益」の実現だが 事業仕分けでは事業が必要かどうかの判断が、主に税金の無駄使いの面から行われましたが、行政運営はそれだけではすみません。行政の目的は「公共の利益」の実現にあるからです。「公共の利益」とは「全国民に共通する社会一般の利益」という意味で、対外的には「国益」です。 ところが現実には、社会保険庁による年金記録消失問題、検察庁特捜部による証拠改竄事件、海上保安庁や警察庁の情報漏洩問題、中央省庁からの天下りなど、「公共の利益」の実現とはおよそかけ離れた不公正行政が後を絶ちません。 これらも行政の内部統制機能が働いていればなくなるはずなのですが、我が国の行政は様々な制度疲労を起こしており、不公正行政を防止できなくなっています。 ○なぜ制度疲労が起きているのか 霞ヶ関の中央省庁では、採用時の一回限りの選抜で生涯にわたる昇進コースを決定するキャリアシステムを中心に、職員の人事管理が行われています。これは古い年功序列のシステムであるため、職員の全般について能力に応じた人事管理をすることが出来ず、無駄の削減など社会のニーズに適切に対応する行政が出来ない原因になっています。 またこのシステムでは一つの官庁に就職すると、ずっと同じ官庁に勤めることになりますので、職員はどうしても出身官庁の利益を追求することになります。その結果、官庁ごとの縦割り行政が生まれ、天下りが横行し、「公共の利益」を実現するための政策を立てることが難しくなっています。 また先の1~3の、行政の内部統制機能を担当する職員も同じ環境にあることから、他省庁の事件や問題を積極的に追求する事は避けるようになります。 さらに政治家も、このような行政の状況に合わせて活動することから、族議員が生まれるなど制度疲労を進める原因を作り出していると言わざるを得ません。 行政がうまくいかない原因は様々ですが、古い人事管理システムによる制度疲労に政治が絡んでいるところが大きく、それが続いている限り行政自らが内部統制機能を働かせることは無理ではないかと、私は考えています。 ○行政監視システム全体の根本的見直しを 私は、立法府(国会)・行政府(内閣)を含めて、行政監視システム全体を根本的に見直したいと考えています。それが表題の「国民主権に基づく新たな行政監視システムの構築」です。 行政が自浄能力を失っているという状況で、国権の最高機関である国会は、もっと行政監視に力を入れるべきであると考えています。 行政を恒常的に監視することが、行政監視委員会の使命ですが、国民主権のもと、行政の統制は国会が一番にやらなければならないことです。 この原点に立ちかえって、国会の行政監視機能を強化する新たなシステム改革を行い、行政が「公共の利益」を実現できるようにしたいと考えているところです。
活動報告

2011-02-17
ご挨拶