168-参-総務委員会-10号 平成19年12月13日 ○末松信介君 自民党の末松です。 今日は、三人の先生方にいいお話を聞かせていただきまして、誠にありがとうございました。 最初に、北海道の上澤先生、地上波デジタルへの移行、二〇一一年ということで、非常に民放、かなりの投資が要るという話がありまして、全体的には我々一兆四百四十億円と、各社平均が五十四億円のお金が掛かるということは伺っておりまして、この問題につきましてはこの委員会でも、せんだっても世耕先生も質問されたんですけれども、大変大きな問題として取り上げております。と同時に、別に条件不利地域だけではなくて、都市部においても難視聴地域が出てくることが予想されまして、総務省の方にもいろんな申入れを行っているところでございます。 今日は、その話が後で出るかもしれませんけれども、先にお聞きをいろいろしていきたいことがございます。 放送というのは私すごいもんだなということを思うんですよね、とりわけテレビ放送というのは。せんだってというか、この七月の二十九日に参議院の選挙がありまして、私と同じ政党の丸山和也さんというのは、兵庫県の姫路市の奧にたつの市というのがあるんですけど、そこの御出身なんですよ。半日だけ姫路市に入ってこられて一緒に回りましたんですけれども、人通りの少ない商店街、人垣ができまして、写真を撮ってくれ撮ってくれということでびっくりしましたんですよ。もう百万票ぐらい出るんじゃないかと思ったんですけれども、二十七万票しか出なかったと。よく考えたら中学生、高校生がやっぱり集まってくるんですよね。だから、有権者、二十歳以上の方は少なかったということなんです。 それにしても、御本人の魅力もさることながら、あの「行列のできる法律相談所」という番組と、二十四時間テレビでマラソンされた姿というのはやはり焼き付いておるという、もうこのことはやっぱりすごいなということを思ったんです。 それともう一つ、日経新聞のコラムで、先ほど藤末先生からもみのもんたさんの話が出ましたんですけれども、日経新聞に「風見鶏」というコラムがありますけれども、これについていろんな、社説というか現代社会を切るようなお話が出ているわけなんですけれども、ここに、みのポリティクス時代となっているんですよね。 露出度の多さから見て、みの氏は今や最も影響のあるオピニオンリーダーであると。みの氏は話術の天才であると。赤坂の議員宿舎はけしからぬ、なぜなら家賃が安過ぎるからだと、この二段論法は強力だと言っているんですね。裁判官になって判決を下すような弊害もあるが、影響力という点であの番組が主戦場となっていると。政治とテレビとの関係を専門とする東大大学院助手の逢坂巌先生はみのポリティクスと名付けていると。「朝ズバッ」の研究を行っていると。単純な切り口で分かりやすいから、国民がどう見ているかという日々世論の調査の場となって、あそこで日々の相場観ができるというんですよね。 ですから、それほど大きな影響があるわけでございますので、私はみのさんのあの番組というのは、そういう点ではユーモラスでかつしっかりとした取材、と同時に慎重さが必要であるということなんですね。一つ間違ったら先ほどのお話のように不二家のような問題が起きてきて、大変なことになってしまうわけなんです。 そこで、最近、放送に関する不祥事というのが総務省から行政指導の件数の推移を見ますと、近年随分増加をしてきています。まあ多いといっても、年間六件ですよね、具体的な行政指導、厳重注意であるとかいうことにつきまして。これはやらせや捏造が多いわけなんですけれども、意図的に間違った映像が放送されますと、「あるある大事典」のように間違った情報を視聴者に与えたり、名指しされた企業や個人の名誉というのは著しく傷付けられるわけなんですね。 私は、このやらせの問題とか捏造というのはNHKより民放が圧倒的に多いと思うんですよ。その原因は、民放の視聴率万能主義と番組の制作の大部分を外注に頼っているというところに大きな問題点があると思っています。 放送局の視聴率が激化する中で、番組制作現場のプロデューサーあるいはディレクターあるいは制作スタッフというのは、視聴率がすべてという、そういう思いの可能性が強いと思うんですよ。営利企業として放送局がコストの削減をやらなきゃならないということで、プレッシャーを与えているということで。 関西テレビのときにもあの問題が起きましたよね、納豆の問題が。あれだって外注していますよね。外注して、孫請までやっていましたよね。そこが請けて、結局三日前に何か実際見て、そのまま流してしまったという。だから、本体そのものが十分なチェックをしていないということなんですけれども、しかしそこにはそういうコスト削減という、視聴率万能という、そういった一つの足かせがあるということなんですけれども、私はそういった背景というものをどのように解消していくのかということをお聞きをしたいわけなんですよ。解消しない限りは捏造とかやらせというのは絶対消えるわけがないんですよ。 この点について、最初に上澤参考人にお聞きをしたいと思います。 ○参考人(上澤孝二君) 二つの問題を指摘されたかと思いますが、最初のテレビの影響の大きさといいますか、テレビの力といいますか、これについては、具体的な他局の番組について直接言及はし難いですが、物事を単純二分割して、あれかこれかと非常に分かりやすい形で、パネルを使いましてテレビで生活情報として提供すると。先生御指摘のとおり、そのような傾向が極めて強くなっていまして、確かに分かりやすいのでありますけれども、すべての物事にはニュアンスがありますので、そこから落ちこぼれる、大事な話がテレビから抜けちゃうと。最近とみにこの点についてのテレビ批判というのが識者の方から随分本、書物などでも指摘されております。 これは、私自身もふだんそのように感じていまして、できるだけ物事は、AかBかという形じゃなくて、Cもあるぞという話をきちっと取材した上で展開するということに努力しないと、見てくれだけのすばらしい視聴率を取っても悪い影響が残ると、こういう懸念を私も持っています。自戒しているところであります。 もう一つの視聴率を至上とするがための様々な不祥事、その構造的な問題としての下請、孫請の問題でございますけれども、今度の放送法改正の中に行政処分ということが盛り込まれるに至ったのも私ども民放の番組に起因することでありまして、私としては極めて残念に思いますし、とりわけ関西テレビは私ども同じ系列局でもありますし、北海道文化放送も放送責任もございましたので、これは極めて深刻に受け止めた次第です。 視聴率ですが、現場のテレビをつくる人たちは、これは御指摘のとおり、やっぱり視聴率、高い視聴率を目指して仕事をしています。そのために、その意欲がいい方向に出れば極めて大きな力を発揮する番組を作ることもできると思います。 残念ながら、しかし間々、視聴率を得んがためにフェアでないそういう手法が出てくるということも事実でございまして、この点に関しては日ごろ、社員、それから私どもにも関連会社の下請の仕組みがございますので、そこに働く人も含めて大いに自戒すべしと日々言っているところであります。具体的には、放送倫理についての研修等、これは本社の社員それから関連会社の社員、一緒にそういう講習をしているところであります。 下請について、具体的に、これは平成十六年に改正下請法というのが施行されまして放送の番組が新たに法律の規制対象になりましたけれども、その際民放連としては、公正取引委員会の協力を得まして丸一年掛けて法遵守のマニュアルを作成しまして各社に周知徹底方をお願いした経緯がございます。 ○末松信介君 先ほど関西テレビの件、孫請、下請というような話をしましたけれども、私、風聞で耳にしただけでありまして、私自身も間違ったことを言っちゃいけませんので、まあ風聞でありますから、今ちょっとお話を出させていただいただけでございます。 それで、ただ私、放送界に身を置く人間がおりまして、今回こういった問題について意見をいろいろ聞いたんですよ。今お聞きしたいのは、川端先生にお聞きしたいんですけれども、BPOによる放送不祥事の抑制効果について伺っていきたいんですけれども、彼はどう言うかといいましたら、政府が放送に介入する代わりに公平な民間の第三者機関がマスメディア各社の自浄作用に強い影響力を与える体制にすべきだという意見を持っていました。その意味で、今回の修正案で、BPOに期待して、政府から再発防止計画を求める改正規定を削除したということは評価できるというふうに言っております。同時に、BPOが問題のあった放送事例を審議するだけで、意見を伝えた後、各放送会社に対してその自浄作用にゆだねるだけでは十分な抑止力と再発防止力を引き出せるのかという懐疑的なことも実は語っていました。 それと、特に延べ数十分にわたって虚偽報道を繰り返したわけですよね。指摘を受けた末、不承不承、わずか数秒のおわびをしてうやむやにしてしまうというこの姿勢はひきょうであると言っているんですよ。絶対に改めるべきであると。同じ時間何らかの形でやっぱり謝罪の放送ぐらいするべきだというような、同じ対価を、代償を支払うべきであるという、謝罪として、そういう話も言っているんですよね。「あるある大事典」の問題で民放連からあそこは除名されたそうですけれども、随分苦労をされているということもある方はおっしゃっておられました。 私は、川端先生にお話ししたいのは、民放連は明文化した一定の、BPOが行った判定に対してですよ、民放連は明文化した一定の基準と罰則を設けて、その規定に従って厳格にペナルティーを放送局に科すということが必要だというふうに考えておりますんですけれども、この点についてのお考えを伺いたいと思います。 ○参考人(川端和治君) まず、BPO、特に、放送倫理検証委員会が見解を発表するだけで自浄作用が担保されるのかどうかという御懸念でありますけれども、これは今まで一つの事例があるだけですけれども、TBSのその後取られた対応というのを見ますと、単に放送倫理検証委員会の見解を聞きおくというようなことではなくて、自ら自主的に厳しい反省をされて処分をなさったり、あるいは番組制作の体制について一定の改良をされたりしており、またそのことについて、放送倫理検証委員会に対してTBSの社長から報告がなされております。したがって、見解をただ出しているだけではなく、その後の各社の対応についても我々はきちんと関心を持って見守っており、それが不十分であれば更にこちらの見解をお伝えするということもあるのではないかというふうに考えております。そのような形で、民間の第三者である我々が行動することによって放送倫理の向上が図られるのではないかと思います。 また、民放におかれましては、放送倫理手帳というものがありますけれども、ここに載っている民放連放送基準というものがございます。これは相当詳細な基準でありまして、我々が放送倫理からの逸脱があるかどうかということを判断する際には、当然のことながらこれを参照させていただいております。その結果として、放送倫理の逸脱があるということになり、それが著しければ、先ほど御指摘になられましたとおり民放連で問題にするという形になっておりますので、そこには一つのつながりがあり、体制があるというふうに考えております。 以上です。 ○末松信介君 今回、衆議院で修正される前の原案というのは、先生、政府から再発防止計画を求める改正規定を設けたのは、結局、電波法七十六条第一項による運用停止処分や同三項の免許取消処分という厳しい行政処分と、もう先生御存じの、警告との行政指導との間に余りの大きな開きがあると。これは前の総務大臣の菅さんも指摘があったわけですよね。ただ、表現の自由のこととか放送番組編集の自由のため、政府の介入をできるだけ避けて民間の自律機能に期待するということが大切であると、それを尊重していこうじゃないかということで今回の修正になったわけなんですけれども、私、今申し上げたのは、先生、ペナルティーということについて公平性もやっぱり欠けちゃいかぬということなんですよね。だからそれは、おっしゃったように、一定の基準と罰則というのはこのBPOの中の放送の倫理検証委員会の中でこれは作っていくということになるんですかね。今のお話で大体分かったんですけれども。 ○参考人(川端和治君) 放送倫理検証委員会は、事案を一つ一つ取り上げて、それに対して見解を明らかにし、あるいは勧告を行うという先例をつくることによって全体としての明確なルールが形成されていくということを期待しながら活動しております。したがいまして、放送倫理検証委員会が出した見解について各社がどのような対応をするべきかというようなことも、今回のTBSの例が一つの先例となって対応していただけるものだと思います。事案の重大性、深刻性にもよるでしょうけれども、更に大きな問題が起こったときにはより厳しい勧告あるいは再発防止計画の提出を求めることによって、またそれが公表され、各社もそれを放送しなければならないということになっておりますので、視聴者に伝えられることによって自浄作用が果たされていくものというふうに期待しております。 ○末松信介君 次に川端先生にお聞きするんですけれども、放送倫理検証委員会のこの調査、審理の対象はどこまで入るのかということでありまして、衛星放送やケーブルテレビはこれは範疇に入ってくるのかどうかということをまずお尋ねをしたいのと、それと、衆議院の附帯決議には、政府がBPOの取組に資する環境整備について検討を行うことの事項が盛り込まれているんですが、自主規制機能を強化すべきだという論調を背景に、ある面では第二総務省あるいは総務省の下請化するおそれというのはあると思うんですよね。そういうことで、総務省との関係はどう考えているのかということをお尋ねします。 ○参考人(川端和治君) まず、放送倫理検証委員会が対象としております番組というのはあくまでも地上波の番組でありまして、CS等は含まれておりません。それについてこれからどうするかというようなことは、私は放送倫理検証委員会を代表して具体的な審理を行っている立場でありますから、発言する立場にないというふうに思います。 今後、放送倫理検証委員会がどのような活動をしていくかということについては、我々の方では、今回の修正案によって我々に対する役割が一層重要性を増したということを、また期待が増しているということを自覚しておりますので、それを見守っていただきたいというふうに思います。 以上です。 ○末松信介君 最後に、時間がなくなりまして、音先生にもう一言だけ。 いろいろとお聞きをしたかったんですけれども、ローカル局、地上波デジタルの対策に相当の金が掛かって苦しいと、今のこの認定放送持ち株会社制度の導入ということによって、ある面でこれは資本的には支えられる面が出てきますけれども、しかしキー局がローカル局を支配してしまうということがあってしまうと。これによっていろいろと、先ほど申し上げられたように、地域の文化とかそういったものが発信しにくくなるし、自社の制作ができなくなってくるということなんですけれども、この点について、改めてどういう方向で持っていくべきかということの先生のお考えだけ、もう一度ちょっと述べていただいて、終わりたいと思います。 ○参考人(音好宏君) 今回の新たな制度というものに関して、私は否定するものではございません。それは先ほど申し上げたとおりでございます。 研究者として地方民放局を調べている中で、やはり今回のデジタル化ということは相当厳しい経営に対するプレッシャーになっていることは間違いないかと思います。 もう片方で、今までの日本の民間放送は地元のやっぱり放送文化の担い手であったことも非常に間違いございませんでして、正に先ほどの上澤さんのお話にございましたとおり、地元と向き合ってどのような形で放送サービスをちゃんと提供していけるのかという、ある種の志というようなものが示されるかどうかということが非常に重要なのではないのかというふうに認識をしております。 その意味では、この制度の運用に関して十分に議員の方々も御議論をいただきまして、地元の放送局が自分たちの番組をうまく発信できるような、そういうような形にしていただければなというふうに思います。 ○末松信介君 ありがとうございました。
活動報告

2007-12-13
第168回国会 参議院総務委員会 第10号