活動報告

2007-06-18
第166回国会 参議院内閣委員会 第19号

166-参-内閣委員会-19号 2007年06月18日 平成十九年六月十八日(月曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員の異動  六月十四日     辞任         補欠選任         加藤 敏幸君     黒岩 宇洋君  六月十五日     辞任         補欠選任         松下 新平君     松井 孝治君      風間  昶君     山本 香苗君  六月十八日     辞任         補欠選任         木俣 佳丈君     松下 新平君      山本 香苗君     風間  昶君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         藤原 正司君     理 事                 秋元  司君                 鴻池 祥肇君                 朝日 俊弘君                 工藤堅太郎君     委 員                 佐藤 泰三君                 末松 信介君                 田村耕太郎君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 山谷えり子君                 神本美恵子君                 主濱  了君                 松下 新平君                 風間  昶君                 亀井 郁夫君    事務局側        常任委員会専門        員        鴫谷  潤君    参考人        富士電機ホール        ディングス株式        会社相談役        日本経済団体連        合会労使関係委        員長       加藤 丈夫君        千葉大学法経学        部長       新藤 宗幸君        兵庫県立大学大        学院応用情報科        学研究科准教授  中野 雅至君        財団法人総評会        館理事長        行政改革推進本        部専門調査会委        員        丸山 建藏君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付)     ───────────── ○委員長(藤原正司君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  去る十四日、加藤敏幸君が委員を辞任され、その補欠として黒岩宇洋君が選任されました。  また、去る十五日、松下新平君が委員を辞任され、その補欠として松井孝治君が選任されました。  また、本日、木俣佳丈君が委員を辞任され、その補欠として松下新平君が選任されました。     ───────────── ○委員長(藤原正司君) 国家公務員法等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人の方々から御意見をお伺いいたします。  本日は、富士電機ホールディングス株式会社相談役・日本経済団体連合会労使関係委員長加藤丈夫君、千葉大学法経学部長新藤宗幸君、兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科准教授中野雅至君及び財団法人総評会館理事長・行政改革推進本部専門調査会委員丸山建藏君に参考人として出席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人の方々から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、加藤参考人、新藤参考人、中野参考人、丸山参考人の順序でお一人十五分以内で御意見を述べていただき、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  御発言をいただく際は、その都度委員長の指名を受けてからお願いいたします。  また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、加藤参考人からお願いいたします。加藤参考人。 ○参考人(加藤丈夫君) 加藤でございます。よろしくお願いいたします。  私は長年、富士電機という電機会社で長く人事・勤労関係の仕事に携わってまいりまして、二〇〇四年までの四年間会長を務めてまいりました。現在は相談役をしておりますが、日本経団連では二〇〇三年から労使関係委員長を務めております。そうした経験に基づいて国家公務員法改正案について意見を述べさせていただきたいと思います。  第一に、能力主義、実績主義に基づく人事管理制度についてでございますが、日本経団連ではかねてから国家公務員の人事管理について、第一に年功序列の人事慣行を見直すこと、第二には職務遂行能力、実績評価に基づく人事管理のための新たな評価手法を導入すること、第三に適正な評価に基づく抜てき、降格、配置転換を実施することを提唱してまいりましたけれども、今回の政府案が能力・実績主義に基づく人事管理制度の確立を明記した点については評価できると考えております。今後、この基本方針に沿って、できるだけ速やかに新人事制度をスタートさせるように努力していただきたいと考えております。  特に近年、優秀な若手公務員の士気の低下、退官が目立つと聞いておりますし、また、法文系の学部卒や法科大学院卒の優秀な学生が公務員を志望しない風潮があると聞いておりますけれども、新人事制度の確立によってこうした傾向に歯止めを掛けることを期待しております。  新人事制度の導入に当たって、民間企業で能力主義、実績主義に基づく人事制度の実施に取り組んだ経験から、次の三点を指摘しておきたいと思います。  第一には、当然のことながら、評価結果は任用や昇進などの配置だけでなく、給与や特別手当、賞与でございますが、これらの処遇に積極的に反映させるべきだと思います。特に賞与については、期間内に努力して成果を上げた者に対しては額の面で報いることができるような制度設計をしていただきたいと思います。  人事評価を行うに当たっては、評価項目とその内容をオープンにすべきであり、さらに評価結果については、なぜそのような評価になったかの理由を含めて本人に説明できるようにしていただきたいと思っております。  もう一つは、現在のように国家公務員の総人件費抑制の中で能力主義、実績主義を導入しようとすれば、ややもすれば制度は減点主義に陥る可能性があると思います。制度の目的の一つが公務員のやる気を起こさせるということにあるのであれば、財源の問題もございますが、あくまでも加点主義を貫くということで運用していただきたいというふうに考えております。  次に、公務員の再就職に関する規制の改正でございますけれども、これも日本経団連では、国家公務員の再就職管理について、第一に、役職定年制を導入し、希望する者に定年までの雇用が選択できる複線型人事制度を設けること、第二に、再就職管理の一元化を行うために透明度の高い人材マッチングシステムを導入することを提唱してまいりましたが、今回の政府案で再就職管理の一元化を打ち出した点は評価できると考えております。新設される官民人材交流センターはこれが効果的に機能するような仕組みづくりが重要だと考えておりまして、今後、この経過を見守ってまいりたいというふうに思います。  民間の企業で人材の採用にかかわってきた経験から申し上げますと、豊富な経験を積んだ国家公務員が民間企業で活躍できる場はたくさんあると考えております。特に、現在、企業経営の重要な課題になっています一つは国際化の推進、二つ目にはCSR、コーポレート・ソーシャル・リスポンシビリティーへの取組の問題、第三には、コーポレートガバナンスの確立というテーマでは公務員としての経験が大いに生かされることになると考えております。  もちろん、押し付け的な再就職あっせんや特定の利益誘導をねらった人材招聘を厳しく排除することは当然のことでありまして、政府案にも盛り込まれておりますが、監視体制の整備やルールに違反した者への罰則を明確にする必要はありますけれども、一方で、優秀な人材が広く民間企業で活躍できる機会を増やしていくことは重要だと考えております。その意味で、国家公務員の再就職を厳しく制限して実質的に再就職ができなくなるような取組というのは国民経済全体にとってマイナスになるのではないかと思います。  日本経団連では、かねてから官民の垣根を低くして活発な人材交流を行うということを提唱してまいりましたけれども、今回のセンターが運営面で高い透明度を維持して人材の交流に前向きの役割を果たすことを期待したいと思います。  ただ、今回は、国家公務員のいわゆる出口管理について一つの方向が示されましたが、できるだけ速やかに入口管理の見直しにも取り組んでいただきたいと考えております。  日本経団連では、Ⅰ種公務員は内閣の下で一括採用すべきであり、既採用のキャリア社員については、一つは一定の官職以上にある職員の内閣による一元管理、二つ目に課長補佐以上の職員を対象とした定期的な府省庁間のローテーションの導入を提唱しておりますけれども、今後、センターの仕組みづくりと併せてこの課題に取り組むことが公務員制度の改革にとって重要だというふうに思っております。  私の意見は以上でございます。 ○委員長(藤原正司君) ありがとうございました。  次に、新藤参考人にお願いいたします。新藤参考人。 ○参考人(新藤宗幸君) 千葉大学の新藤でございます。  現在上程されております国家公務員法等の一部を改正する法律案について意見を述べさせていただきます。  国、地方にわたって現行公務員制度に多くの問題点が生じており、その改革が必要であるのはもはや自明であると言えます。ただし、公務員制度は国の基幹的行政制度の一つですが、それ自体として存在するのではなく、行政組織制度、予算制度、地方制度、行政処分や行政手続の制度などとの整合性を視野に入れつつ改革が行われるべきだと考えます。その意味では、公務員制度改革基本法的なものが前置されるべきであると考えます。しかし、本日は、政府提出法案に対する所見が求められているわけですから、時間も限定されておりますので、他の基幹的制度を視野に入れつつ、以下の三点について述べさせていただきます。  第一点は、国家公務員の職階制に関する法律の廃止及びその根拠となっている現行国家公務員法第二十九条の削除についてです。  今回の法案をめぐる国会内外の論議は、専らと言ってよいほど公務員の再就職規制の在り方に置かれているように思います。これについては後ほどまた述べますが、そのような中で、ほとんど議論なく職階制に関する法律が廃止されようとしております。現行法に職階制の規定が定められ、職階制に関する法律が制定されていても完全実施に至らなかった経緯は省きますが、どこまで詳細な職務と職級の分類を行うかは検討を要するとしても、職階制の廃止は時代の求めに逆行してはいないでしょうか。  国家行政組織法を基準法として、各省設置法令は、省、局、課等の組織単位ごとの所掌事務を定めています。しかし、ポジションの責任と権限とは何かについては明文上の規定を置いておりません。HIV薬害事件で、当時の厚生省薬務局生物製剤課長が業務上過失致死罪で起訴されております。生物製剤課さらには薬務局を弁護する気持ちなど毛頭ございませんが、生物製剤課長、薬務局長の権限と責任とは何かは法的には不明であります。  こうした公務員制度並びに行政組織制度が、無責任の体系と言われる日本の行政の根幹を形成していると言えます。それは、今正に重大な政治行政問題となっている年金問題にも当てはまります。社会保険庁長官、地方社会保険局長、社会保険事務所長等の権限と責任に明文上の規定を置いていたならば、ここまでの事態の悪化は避けられたのではないか。職階制の廃止については法案から削除し、時代状況と日本の行政組織に適合する職階制を、国会、内閣、さらに民間の英知を結集して探るべきだと言えます。  第二点は、採用、昇任、降任、転任、免職等に関する法案の規定です。  まず、これまた議論が再就職規制に偏っているためか、法案から全く見えないのは、公務員制度改革と言いつつも、現行の入口選別によるいわゆるキャリアシステムをどうするのかです。将来的昇進可能性を入口で決定している現行公務員制度は、戦前期官吏制度を事実上引き継ぐものであり、行政省内に隠れた身分制をしいているとしか言いようのないシステムです。それが職員のモラール、モラルにダメージを与えていることは、九〇年代の旧大蔵省高級官僚や外務省のいわゆるキャリア、ノンキャリアにわたる不祥事に表れております。  再就職規制の前提とされている早期退職勧奨制度の根源もこの入口選別にあると言わねばなりません。昇進可能性を当初から制約している現行のⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種の試験区分を学歴区分の試験制度に改め、入省後の一定期間を経過した後に能力判定を客観的に行うシステムに改めるべきです。  また、今回の法案では、官職にかかわる標準的職務の遂行能力を定め、それによる昇任、降任、転任、さらには免職を制度化するとしています。これは、二〇〇一年十二月の公務員制度改革大綱以来の流れです。しかし、これを導入するならば、正に先に述べた大くくりであれ、職階制の実施と一体で考えるべきことです。  また、職員からすれば、勤務条件の変更に係る事態が生じますから、当然、労働基本権の保障、少なくとも労働協約権の保障を制度化せねばならないはずです。日本政府は、ILOから度重なる勧告を受けているのであり、国際標準に国内制度を適合させるべきです。もちろん、労働協約権の対象をどこまでとするかについては議論が残ると言えます。ただし、給与にまで及ぼすとすれば、他方で財政民主主義と適合させねばなりません。したがって、この場合には、人事院の民間給与実態調査を充実させ、人事院に標準値を示させるシステムを整える必要があると言えます。  さて、第三は、再就職規制、つまり天下り規制の在り方と、そのために設けようとしている官民人材交流センターについてです。  現在、問題視されている緑資源機構、国土交通省の問題だけでは決してありませんが、早期退職勧奨制度と、いわゆるお土産付き天下りが官製談合事件の温床になっており、天下り規制の強化が必要であるのはもはや社会的合意であると言えます。しかし、今回の法案における再就職規制は果たして実効性を持っているのか、甚だ疑問の点がございます。  法案では、それぞれの官庁による再就職のあっせんを禁止し、内閣府に設置する官民人材交流センターが職員の離職後の就職のあっせん、援助を行うとしております。また、従来の人事院の事前規制を撤廃し、その代わりとして、再就職後二年間は離職前五年間に担当した職務に関する働き掛けを出身官庁にしてはならないとしております。さらに、再就職等監視委員会を内閣府に設置し、再就職規制の適用除外、再就職後の活動に対する監視を行うとしております。  しかし、法案に即して問題点を指摘をしておきますと、第一に、官民人材交流センターは、官庁から独立していかに求人情報を集めるのかです。センターが再就職をあっせん、支援する対象者はほぼ五十歳以上の公務員と想定されますが、規制権限や補助、融資等の権限を離れて考えるとき、民間企業は果たして官庁の管理職、幹部であったがゆえに受け入れようと考えるでしょうか。もっと若い有能な人材を求めるはずです。ここに正に天下り問題の根幹があって、各種の行政権限が官庁に高度に備わっているゆえに天下りを受け入れてきたと言えます。  本年四月二十四日の「公務員制度改革について」なる閣議決定は、あっせんの対象職員に関する必要なキャリア及び人的情報把握のため、センター職員は人事当局と必要に応じて協力するものとするとしております。しかし、求人情報が各省官房からこうしたルートを通じてセンターに渡れば、センターなる新たな就職の舞台がつくられるとしても、実態は変わらない。もう少し言えば、現行の各省によるあっせんにカーテンを掛けるようなものだと言ってもよいのではないでしょうか。  第二に、官民人材交流センターは、在任中の職員の再就職をあっせんすることになっています。逆に言えば、職員が退職したならば、その日から多様な官庁時代に培ったコネクションを用いて再就職することは全く規制の対象となっておりません。これは明らかに法的規制の盲点であって、これを利用しようとする動きが生じるはずです。  第三に、官庁の大臣官房が再就職のあっせんをすることは禁じているものの、退職官僚が再就職のあっせんをすることには何らの規制も掛かっていません。一種の影の官房長がつくられ、そこを通じた再就職、天下りが行われることも十分に想定できます。  第四に、退職手当通算予定職員は、法の建前からいえば出向であって、原籍のある官庁に戻ることになっております。しかし、このいわゆる出向先で退職し、当該独立行政法人等の役員あるいは関連法人の役員に就くことがあり得るし、現にそのような状況が存在しています。しかし、これへの規制が抜け落ちております。  第五に、これとの関連で、独立行政法人、特殊法人からの営利企業等への再就職は法案では規制の対象外とされていますが、昨今の官製談合事件、そこまで言わないにしても、随意契約による営利企業等への発注の多さは正にそれが規制されていないからだと言えます。  第六に、再就職した人間が二年間は過去五年間の職務に属するものに関して依頼等をしてはならないとしておりますが、実際問題として、退職高級官僚がセールスに歩くわけではないし、官庁側が口利きの記録簿を整備し公表するとは到底考えられず、実効的意味を持っているのか疑問と言わざるを得ません。要するに、官民人材交流センターによる再就職規制が何やら万能薬であるかのような言説が流布していますが、子細に検討するならば、再就職規制に実効性を持っているとは考え難いと言えます。  再就職、天下りの解決のためには、入口選別、年功序列の人事運用、早期退職勧奨の根本からの見直しが必要です。それをベースとした新たな公務員制度の構築を検討しつつ、しかし現時点において規制を実施するならば、現行の人事院による事前の規制、承認の範囲を拡大することです。営利企業はもとより、特殊法人、独立行政法人、公益法人への再就職を内閣から高度に独立した機関の事前承認制の下に置くことではないでしょうか。また、特殊法人、独立行政法人からの再就職に別途法的規制を加えることであると言えます。それでもなお口利きがなくなるとも思えません。これに対しては、片山善博知事時代の鳥取県が試みたように、口利きの記録簿を義務付け、かつ公表する制度を整備することであると思います。  現行公務員法の枠内においても、年功序列と早期退職勧奨の慣習を改めることは可能であります。定年までの就業を当然とした人事運用を図ればよいことです。ラインの長とは別に各種の専門職をつくる、当然のことですが年功序列の給与体系を改める、入口選別をやめる。これらを同時に実施するならば、公務員定数や総人件費に甚大な影響は出ないはず。どこまでが官であり、どこからが民なのか判然としない独立行政法人や公益法人などのグレーゾーンの巨大な体積自体が問われているのであり、この改革のためにも運用面の改革に緊急に着手するべきではないかと思います。  最後に、民間労働市場における正規就業と非正規就業の格差の拡大やリストラが問題視される一方、公務員の世界の安定性が世上の関心となっております。私は、公務の世界の安定性を否定するものではありません。ただし、こうした状況の中で、退職予定公務員のみを対象とし、多大な予算と人員を配置した再就職あっせん機関を設置することは、世論を逆なでするようなものではないか、そのように申し上げたいと思います。  以上でございます。 ○委員長(藤原正司君) ありがとうございました。  次に、中野参考人にお願いいたします。中野参考人。  どうぞお座りください。 ○参考人(中野雅至君) 兵庫県立大学大学院准教授の中野でございます。  本日は、参考人として意見陳述を行う機会をいただきまして、誠に光栄に存じております。  私は、厚生労働省に十四年間勤めました後、公募で現在の職場に移りました。現在は、行政の情報化や公務員制度を中心に研究を行っております。本日は、これまでの経験を踏まえまして、現行の公務員制度の問題点、政府案の評価の二つについて意見陳述したいと思っております。  まず、現行の公務員制度の問題点についてですが、大きく分けますと二つあると考えております。  一つ目は、採用から退職管理まで各省ごとになっている、いわゆるセクショナリズムの問題であります。今更言うまでもありませんが、日本の行政の大きな課題として、各省が国益ではなく省益を追求するセクショナリズムを挙げることができます。セクショナリズムをもたらす要因は幾つかあると思いますが、私は、退職管理が各省ごとになっていることで多くの公務員が省益に取り込まれるというふうに考えております。各省が自らの専門知識に基づいて対立するような、そういうセクショナリズムは決して悪いとは思わないのでございますが、各省の意見の対立の背後に再就職先の確保も含めて様々な利害が関連していることが今日の大きな課題となっておると考えております。そんなことを考えますと、様々な改革メニューの中でも、各省ごとの退職管理こそが最もプライオリティーの高いものだというふうに考えております。  二つ目の問題点は、再就職先や省益というものは各省別で非常に個性的になっているにもかかわらず、公務員全体といたしましては、どの省に所属しようが、どこに勤務しようが、どういう実績を上げようが、余りにも労働条件が一律平等になっているということでございます。公務分野では、民間企業と異なりまして、仕事の評価基準がたくさんございます。役所や公務員の場合、効率性や利益だけを追求するというわけにもいきません。効率性のほかにも、平等性や有効性など様々なものを追求しなければならないことから、役所や公務員の仕事の評価は簡単ではありません。また、大半の組織ではラインを中心に集団で働くのが一般的ですので、個々人の成果を測ることは非常に難しいと思います。さらに、OECDの調査でも、公務分野におきましては過度の成果主義は機能しないというふうな結果が得られております。これらのことを踏まえますと、極端に労働条件に差が付くことは余り望ましいとは思いません。  しかし、これらのことを割り引いて考えましても、現状は余りにも労働条件に差がないと思います。採用試験、採用年次を中心に、処遇が年功に重きを置き過ぎていること、勤務評定制度が事実上機能していないことなどから、信賞必罰の人事ができておりません。総じて言えば、部内均衡に気を配り過ぎていると思います。最近はその反省の上に立って徐々に改善が加えられておりますが、一層の努力が求められます。  また、認識すべきなのは、このように一律平等過ぎる労働条件が民間との著しい違いを生み出しており、それが公務員批判の一つの要因になっているということです。  バブル経済崩壊以降、民間企業では成果主義の導入や雇用の不安定化が起こっております。これの善悪はさておくにしましても、公務の世界ではバブル経済崩壊以降も年功序列の処遇がなされてきましたし、部内均衡が相変わらず重視され続けました。その中でも最も大きな違いは、民間では終身雇用制度が崩壊した結果、雇用が不安定化する一方で、公務分野では身分保障が厳然としているということです。  確かに、仕事の性格上、公務員の身分保障は求められると思います。試験任用を公務員制度の中心に置く限り、身分保障もセットにして考えるべきではありますが、現行法においても勤務実績などを分限処分の基準にしていることから考えると分かるように、専門能力の発揮や生産性の高い仕事というのも身分保障の一要件だと思います。その意味では、官民の労働条件をもっと近づけるような努力が求められます。  このような状況を考えますと、公務分野では業績評価や能力評価が難しいという意見もあるでしょうが、人事評価を任用、給与の中心に置くことで、公務分野においても労働条件の多様化を促すべきだと思います。  第二に、政府案の評価について幾つか総論的に述べさせていただきたいと思います。  まず第一に、国家公務員の退職管理の一元化、能力評価など、これまでなかなか進まなかった改革が進んだことは高く評価されるべきだと思います。  これまで、九七年の公務員制度調査会の意見、二〇〇一年の公務員制度改革大綱など様々な改革案が出されてきましたが、十年間以上の長きにわたって実行に移せなかったことを考えますと、法案の提出に至ったこと自体、高く評価されるべきだと思います。  第二に、政府案が包括的な改革を目指しているという点についてです。  今年四月二十四日に閣議決定されております「公務員制度改革について」というペーパーを見ますと、公務員制度改革をパッケージとして進めていくとされていまして、今回の再就職の内閣一元化の後に、総合的な公務員制度改革を推進するため、基本方針を盛り込んだ法案を次期通常国会に提出するとしております。このように、包括的な改革を視野に入れてプライオリティーの高いものから順次実施していくという視点は非常に重要だと思います。  公務員制度改革の論点は、大まかにとらえましても、定員管理や組織編成を含めた公務員制度の管理手法、それから採用、昇進の基本原則の在り方、それから幹部公務員の在り方、再就職問題、給料制度、人事評価制度、身分保障、能力開発、労使関係の在り方、それから中央人事機関の在り方も含めて十項目が考えられます。しかも、これらの制度は相互に依存しておりまして、単一分野の改革で瞬時にすべての課題を解決することは恐らく不可能だと思います。例えば、公務員の再就職についても、定員数や組織活性化、それから公務員の職業選択の自由という制約がある中で、早期退職勧奨という雇用慣行や各省別の採用などが関連しております。これらの課題を解決するためには、様々な改革案を総合的に実施していくことが必要であります。また、人を扱っている以上、短期的に物事を解決することは難しい側面があり、粘り強く改革を実施していくことが重要であると思います。  このような観点から政府の取組を見ますと、組織活性化や定員管理などの制約あるいは官民交流の促進という観点から、早期退職勧奨を維持しつつも、定年延長やスタッフ職制度の創設を検討するなど、様々な分野の改革を総合的に実施することで課題の解決を図ろうという姿勢が見られるところが非常に評価されます。  このように、適度なスピード感を持ちながら総合的な観点から改革を実施していくということは、公務員制度改革の複雑さを考えますと、非常に重要だと思います。公務員制度改革の複雑さや難しさは、諸外国においても変わりません。そのため、諸外国の事例を見てみますと、総合的なパッケージやデザインを描けないまま、まず人員削減から手を付けるというところが多くございまして、その結果、思ったような結果が得られておりません。他方で、公務員制度改革が複雑で簡単に手を付けられないということを理由にして改革を先送りするというのも許されるものではありません。今回の政府案は、このような両極端な対応を退け、複雑な公務員制度改革に正面からぶつかりながらもグランドデザインを視野に入れて現実的に改革を推し進めようとしている点が非常に評価されます。  第三に、政府案のバランスの良さについてです。  それは、公務員の再就職の扱いに表れています。様々な不祥事もあり、公務員の再就職については厳しい目が注がれております。他方で、公務員といえども職業選択の自由は認められるべきです。また、官に眠っている人材を有効活用したり、官民交流も進めなければいけません。さらに、組織の活性化や定員削減も求められております。このような相矛盾する要素から成り立つ連立方程式の解として政府が厳しい事後規制と退職管理の内閣一元化を打ち出したところは、非常にバランス感覚としても優れていると思います。  第四に、これまで徐々に進められてきましたが、官民交流という概念を中核的なものとして打ち出したところも評価されます。その具体的な表れが、事前規制から事後規制への方向の明確化です。確かに、事前規制が撤廃されることで官民癒着が起こるのではないかという問題もあると思いますが、今回はそれに見合った厳しい事後規制が導入されております。  これからの時代、より少ない公務員でたくさんの仕事をするためには、民間資源を有効に活用することが求められます。また、労働力人口自体が少なくなることを考えると、官民を区別せず、働ける人を有効に活用していくことが求められます。更に言えば、民間企業でも役所でも仕事のできる人の評価は似通ってきつつあります。与えられた予算と人的資源の中で最大の効果を上げるという意味では、経営能力が求められていることは官も民も変わりません。実際、米国などでは経営能力を頼みにして、非営利、それから営利法人、全部渡り歩く人がいます。そういう時代においては、官民交流がもたらす弊害を除去する措置を講じた上で、官民を積極的に交流させる方向に進む方がメリットは大きいと思います。  次に、政府案の各論について幾つか述べたいと思います。  まず第一に、今回の法案で退職管理を各省管理から内閣管理に移したところは非常に評価できます。第二に、各省による再就職のあっせんが禁止される対象として非営利法人まで含めたという、この点も非常に評価されます。第三に、天下りに焦点が集まる一方で看過されておりますが、人事評価を人事管理の原則の基礎としたことは画期的なことでございます。  このような観点から、政府案というのは非常に優れたものだと考えております。  最後に、公務員制度改革は、政治改革や行政改革に続く大きな改革でございます。新しい公務員制度の下で、公務員が誇りを持って働くことができる環境の整備を望むばかりであります。  本日は、意見を述べさせていただける機会をいただきまして、誠にありがとうございました。 ○委員長(藤原正司君) ありがとうございました。  次に、丸山参考人にお願いいたします。丸山参考人。 ○参考人(丸山建藏君) 総評理事長の丸山でございます。  私は、公務員組合の役員をやってきた立場から、働く者の立場で意見を申し上げたいと思います。  私は、審議されております国家公務員法等改正案は、本質的に重要な問題点が三つあると受け止めております。一つは、これからのあるべき公務員像や、公務員の役割を含む公務員制度全体の抜本的な改革の方向が示されていないことであります。二つは、いわゆる天下りの行為規制について、勧奨退職など人事管理を改めないと実効性が危ぶまれることであります。三つに、能力・実績主義の人事管理では、使用者権限が強まる一方で、労働基本権の在り方を含む労使関係制度の改革や人事評価制度の考え方が示されていないことであります。  このうち、私は、能力・実績主義の人事管理を中心に意見を述べたいと思います。  私は、能力・実績主義の人事管理に反対するものではありません。ただ、個々人の仕事を評価し、それを処遇に結び付け、これを実効あるものにするには、評価者と被評価者、労使の関係など、十分な条件整備が必要だと思うわけであります。その点で、改正法案には幾つかの疑義があります。  その第一は、人事行政の中立公正性についてであります。  中央人事行政機関として人事院と内閣総理大臣があるわけですが、改正法案ではこの所掌事務を見直し、内閣総理大臣が標準職務遂行能力、採用昇任等の基本方針、人事評価に係る事務を所掌することになっております。任用や人事行政全般の基準と実施が使用者である内閣総理大臣、各府省大臣にゆだねられますと、政治が公務員の人事に介入をし、中立・公正性が損なわれる危険性が高まるわけであります。政治から公務員の地位、官職を保障する中立・公正性が確保できるようにしていくべきであります。  第二は、新たな人事評価制度の確立が不可欠であります。  今回の改正法案は、任用、給与、分限がすべて人事評価に基づくことになっております。そのための新たな人事評価制度は現在試行中のものを整備する、このようでございますが、どのようなシステムになるのか、いつ本格実施となるのか、どのように活用するのかが現段階では全く不明確であります。これでは評価される側の公務員は不安でありますし、使用者として無責任と言わざるを得ないと思います。  新たな人事評価制度は、任用や給与を活用するだけに公平公正、透明で納得性のあるものにする必要があります。そのためには、特に評価の基準の周知、本人への評価結果の開示、職員代表等が参加をする苦情処理制度の整備が不可欠であります。政府はこれを明確にするべきでありますが、試行の現段階では不透明です。この実行は年功主義の強いキャリアやいずれ管理職的立場に立つそういう人たちが多い霞が関、本省から範を示すべきと思います。  次に、人事評価の勤務条件性と労使協議についてです。  政府は、人事評価に関して勤務条件ではないという見解のようであります。そこに疑義があるわけであります。評価基準に基づいて個々人をAあるいはBに評定し、その結果で人事を個別に行うことは確かに人事管理権限です。しかし、評価の結果が人事や給与の処遇に影響するわけですから、どのように評価が行われ、それがどのように活用されるのかは、すなわち評価や任用の基準、昇給昇格の基準は切り離すことができないわけでありまして、勤務条件性を含んでいるというふうに思います。したがって、基準や運用の仕方については労使の交渉、協議事項であると考えるわけであります。  そして、能力・実績主義の人事給与管理を行うには評価される側の理解と納得が不可欠であります。評価によってそれぞれが弱点を克服し、モチベーションを高め、成果に結び付ける、それがこの目標ですから、使用者が一方的にやるべきではないと思います。その意味で、人事評価にかかわるシステム設計に当たりましては職員団体と十分に協議をし、合意を得るべきであります。民間では労使交渉に加え、労使協議によって創意工夫を重ねているわけですから、公務も労使協議制を整備することが重要な課題と言えます。  第三は、能力・実績主義人事管理と労使関係制度の改革は不離一体であります。  能力・実績に基づく人事管理がスムーズに機能するためには、これまでのように使用者側の一方的な関係性ではなく、労使双方が対等の関係性の中で話し合う交渉、協議によって物事を決定していくシステムが必要です。今回の改正法案で、使用者、当局の人事管理権限が強化されるにもかかわらず、公務における労使関係の改革の方向性が一切盛り込まれておりません。極めて遺憾なことと受け止めております。本来、能力・実績主義と労使関係の改革はセットで行うべきであります。労使関係の改革はこれと切り離し、先送りすることは認められないことであります。  四月の二十四日の閣議決定で、労働基本権の在り方は専門調査会の審議を踏まえ、引き続き検討するとし、渡辺大臣は、労働基本権を付与する方向で検討すべきとの考えを表明されております。これ自体は、これまでに比べ一歩前進と言えますが、明確ではなく、不十分と思います。能力・実績の導入は、公務の特性を踏まえながらも、民間企業と同じように能力と成果で人事、給与を行うわけですから、公務員にも同じような権利を保障すべきです。この点は、ILO勧告に基づいて公務の労使関係を改革するとの方針を改正案に明記すべきと考えます。  公務員制度の抜本改革の必要性にかかわって、改正法案の慎重審議を求めたいと思います。  今回の改正法案では、具体的な人事制度の中身はすべて先送りとなっています。例えば、官民人材交流センターの制度設計は官房長官の下の有識者懇談会へ、人事評価制度の中身は政令へ、労働基本権の在り方は専門調査会へといった具合です。これらを見れば、今回の法案がいかに拙速なものであるかが明らかであります。  政府は、四月二十四日の閣議決定で、総理の下に有識者による検討の場を設け、全体パッケージとして改革を進めるための検討を行い、来年の通常国会に国家公務員法等改革基本法を提出するとしています。そうしますと、この有識者による検討の結果や労働基本権にかかわります専門調査会の最終報告を踏まえ、改めて総合的で具体的な法改正が行われることになります。今回の改正法案は、公務員制度の部分改正で、不十分な点がたくさんあるだけに、慎重な審議を尽くしていただきたいと思います。  最後に、総理の下の有識者による検討の場には、労働界代表の参加を要請したいと思います。  今申し上げましたように、総理の下に設置される検討の場は、抜本的な改革に向けたものと言えます。今、我が国は多くの制度改革が進められております。公務部門も、事務事業に加え、人と組織の改革が待ったなしの状態であります。公務員制度は、立法や司法と並ぶ行政の在り方にかかわります。その改革は、国民が安心して暮らせる土台づくりでもあります。この改革には広く国民の声を反映させる必要がありますし、働く者を代表する参加を要請しておきたいと思います。  私の意見は以上であります。 ○委員長(藤原正司君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。 ○末松信介君 自民党の末松信介です。  今日は、四人の参考人の先生方には、お越しをいただきまして大変有益なお話を聞かしていただきましたことに、心から厚くお礼を申し上げます。印象として、お二人賛成、お二人反対というふうにまずは受け止めさせていただきたいと思うんですけれども。  それで、私、まず基本的なことをお聞きをしたいんですけれども、最近、公僕という言葉、余り使わなくなったなと、耳にしなくなったなということを思うんですよね。それで、今は国家公務員Ⅰ種、いわゆるキャリアと呼ばれる方々ですけれども、非常に高い志を持って、自分が国を引っ張って、そして世界の中の日本がどうあるべきかという、そういう大きな視点を持っておられるわけなんですけれども、しかし、同時に、早い時点で、支配階級的なそういう意味合いというのを持ち始めると、そして、支配者対被支配者という、そういう感覚というのが出てくるんだなということは、何となく伝わってくるものがございます。  公僕というのを広辞林で調べましたら、パブリックサーバント、公衆に奉仕する者、公務員などの総称となっております。官僚というのはこれ、行政の執行者、官吏、役人とも書いているんですが、特に政策決定に影響を与えるような上級の公務員というように広辞林では書かれているわけなんですけれども、官僚もまた公務員でありまして、キャリア、ノンキャリアの区別なくこれから人事評価をしていこうということなんですけれども、官僚という言葉というのは、これからも、諸外国には当然存在しておるんですけれども、残り続けると先生方は思われるか。また、残り続けさせるべきかということをお考えか。官僚制度をどういうように変えていくべきかということを、まず四人の先生にちょっと冒頭、簡単でも結構ですから、お伺いしたいと思います。 ○参考人(加藤丈夫君) 私は、特にⅠ種公務員について、国の政策執行にかかわる重要な立場として今後もその立場というのをしっかり守っていただきたいと思うし、先ほど優秀な学生が公務員を志望しなくなっているのは心配だというふうに申し上げましたけれども、是非この改革を通じて国を背負う高度な政策判断のできる官僚がこれからもしっかり育っていくことを期待しています。 ○参考人(新藤宗幸君) 私は、先ほども申し上げましたが、入口でのⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種という選別は、もう昇進可能性を前提にしている選別はやめるべきだと。現にⅡ種試験の合格者の九九%近くが大卒であります。かつての高等文官試験あるいは私どもが大学を出るときの上級職甲という時代とは全く違うわけでありまして、したがって学歴区分の試験を行い、その後、一定期間後に能力判定を客観的にやるべきだと。  ただ、官僚という言葉、ビューロクラットという言葉は私は残っていかざるを得ないだろうと。それは、なぜならば、現代のこの国が極めて複雑な機能を政府は発揮していかなくてはならないし、その正に政策、事業案等の準備をするテクノクラートを必要としているわけでありまして、その意味では官僚という言葉は残ると思います。  以上です。 ○参考人(中野雅至君) 今回の改革案では採用試験や採用年次にとらわれない実力主義の人事が行われるということですので、近未来的にいいますと、採用試験によるそういう言葉遣いの違いというものはなくなっていくんだろうというふうに認識しております。ただし、民間企業を見ましても、最近は厳選採用とか早期の時点からの経営幹部への登用みたいなものが起こっておりますので、民間では逆のことが生じておるということでございます。  そういうことを考えますと、今後、今の日本の官僚制度というのは幹部公務員制度としては非常に中途半端なところにありまして、イギリスとかフランスの場合には公務員法上にちゃんと幹部公務員というのを位置付けておりまして、それに基づいて幹部公務員を育成しております。それに対して、現在の国家公務員の世界では三級一号俸への採用試験にすぎなくて、実際は運用でエリート官僚を育成しているということだと思います。  そういう意味でいいますと、幹部公務員を制度化するのか、あるいはこれをなくすのかという方向で、どちらかの方向に行くのかで相当議論があるというふうに考えております。 ○参考人(丸山建藏君) どういう組織もそこをリードするリーダー役は必要なわけでありまして、国におきましても優秀な人材を育成しなければならないと。そういう意味では官僚あるいはリーダーは必要だというふうに思っております。  ただ、これまで指摘されておりますように、いわゆるこのキャリアシステムはセクショナリズム、縦割り行政あるいは官業癒着、いろんな問題を起こしているわけです。そういうものをどういうふうに国民に信頼あるものにしていくかという点で考え方を整理する必要があると、このように思います。 ○末松信介君 ありがとうございます。  四人の先生方の言葉を重く受け止めたいと思うんですけれども。前の首相の小泉さんというのはやっぱり演説のときに必ず言ってたのは、官僚の既得権益の打破だということをずっと演説で言っておられましたんで、正に、官僚は残るけれども既得権益はやっぱり守ってやるということはこれ駄目だと、つぶしていかなきゃならないと、そういう社会に変えようという、その点では四人の先生方の御意見、一致するなということを私も思ったわけであります。  それで、実は、新藤先生からⅠ種、Ⅱ種の話が出ましたんですけれども、私も国土交通委員会におりましたんですけど、急遽内閣委員会に入ってまいりまして、今質疑に立っておりますんですけれども、地方公務員にこういった今回の官民人材交流センターとか新たな人事評価制度、既にやっている自治体もあるんですけれども、こういったものについて、地方自治体まで合わせていかなきゃ駄目じゃないかと。先輩の、総理までお務めになった方も、これ地方公務員はどうするんだという話が最初に出ましたですよ、今年の四月ごろでしたかね。  私思うんですけれども、既に地方公務員の場合はキャリア、ノンキャリアというのは存在していないわけですよね。私の兵庫県では、実は前の副知事は、実は高校卒業なんですよ、高卒なんです。だから、全く頑張ってもなれない、絶対なれないという、そういう可能性を残さない制度というのは、私は間違っていると思っているんです。だから、今回のやり方でキャリア、ノンキャリアなしに、採用年次や採用種別というのは問わず、頑張れば報われるという制度に変えようということは正しいなと思うんです。  ただ、地方公務員の場合は六十歳まで、ほぼ定年、お勤めになります。と同時に、七級以上の方は、どうされますかというようなお尋ねが退職前の秋ごろあるんでしょうけれども、まあ県税所長だったら主任クラスで残られておられるというような、そういう甘い面も実は存在をしているわけなんですね。  それともう一つは、今おっしゃったように、キャリア、ノンキャリアの問題がないということで、この三つが既に存在をしておりますので、私はちょっと国家公務員と地方公務員制度というのは、これはなかなか一致させることは難しいという、すぐ同じ舞台で、レベルで考えることは難しいかもしれませんけれども、ただ、国民は、いろんな不祥事等々については極めて地方公務員の不祥事というものに対して敏感に反応すると。国家公務員はやっぱり非常に遠いところで起きるわけなんですね、問題というのは。そういう眺め方をしておると、そう思います。  したがって、私は地方公務員についても将来的にこうした人事評価なり、あるいは官民の人材交流センターというものを設置していくかどうか、その必要性について先生方にちょっと、簡潔で結構ですので、御答弁をいただきたいと思います。 ○参考人(加藤丈夫君) 先ほども少し申し上げましたが、日本経団連ではかねてから官民の人事交流についてお互いの垣根を低くした積極的な交流をすべきだということ、そして、イコールフッティングという言葉を使って交流の活発化ということを提唱しておりますけれども、それは国家公務員も地方公務員も同じだと思います。  ただ、現在進めている国家公務員の改革をそのまま地方公務員に広げていくということについてはいろいろな問題があるし、まだ解決しなきゃならない問題があると思いますので、やがて地方公務員にまでも広がる問題だと思いますけれども、まずは国家公務員の問題をきちっと整理すべきだというふうに思っています。 ○参考人(新藤宗幸君) 末松先生御指摘の問題というのは、よくそれなりに分かります。ただし、入口でその選別をしているわけではなくて、学歴区分の試験であり、それから年功序列を取っているわけではない。ただ、部長級まで行くと、六十歳まで勤めないで一年ぐらいを残して外郭団体に行っているというのは、多くの県レベルでは、あるいは政令市ではほぼそのとおりだと思います。  ただ、今問題になっているのは、国家公務員の正に言うところのキャリアシステムを前提にした早期退職勧奨とその後のいろんな再就職、そこに様々な腐敗というかスキャンダルの温床が生まれるから社会的な問題になっているのであって、そこの議論に当面は私は絞るべきだろうと。  それから、地方公務員といっても、四十七都道府県、十七の政令市、それ以外の市町村、これは非常にバラエティーがあります。また、いわゆる一般市のレベルでいえば、例えばこの近くでいえば、埼玉県志木市の前市長の時代から試みられているような、いわゆるキャリアというのは職業公務員としての公務員だけではない部分も加えた職員機構をつくろうという動きも出ておりますので、そこは相対的に分けて考えるべきだと私はそう思っております。 ○参考人(中野雅至君) まず退職管理に関しましては、地方公務員は恐らく国家公務員ほどシステマチックに退職管理を行っておらないと思いますので、同じような厳しい事後規制が要るのかどうかというのはちょっと疑問に感じております。  それから、二つ目は人事評価でございますが、これは地方公務員も当然導入されるべきだと思っております。現在、国家公務員の、今正に法案で議論されておりますが、その前に既に鳥取県では人事評価を行っておりますし、もっと厳しいところで見ますと、北海道庁なんかは分限処分と人事評価を絡めておりますので、非常に厳しい人事評価がなされておるというところで、各県、各市によって非常に多様性が見られるというところだと思っております。 ○参考人(丸山建藏君) 地公にはいわゆる天下りというのはあるんだろうと思いますけれども、国公のようにキャリアシステムというふうに制度化、やや制度化されたものはないというふうに私は仲間から聞いております。そういう意味では、国からまず優先して範を垂れるべきだと、このように考えております。 ○末松信介君 ありがとうございます。  私も先生方と考えが一緒で、やはり条件が違うんです、環境が違うんですよね。まずはここをきちっとやってということで。  ただ、割合、県民は、国家公務員制度でキャリアとノンキャリアと、そういう言葉の違いって分からないんですよね、何でそんなに早く辞めちゃうのと言う。新大阪から東京まで、新大阪を出発して東京が事務次官となったら大体早い人だと名古屋で降りちゃうと、もう遅くとも新横浜では降りてしまうということが、その意味が分からないんですよね、これが。気が付けば何とか財団法人行っているとか、何とか法人行っているというようなことが起きてくるということで、何かいい思いしているんじゃないかという、そういう向きというのがありますんですけれども。  私は、とにかくこの有為な人材をどう活用するかということで、人材の交流センターつくって、しかも透明感を持たすという、口利きについても厳しい制約を設けるということになっていますんですけれども、期待を寄せたいと思うんですけれども、一部先生方と御意見違うところあるんですけれども。  それで、ちょっとまた原点に戻るんですけれども、公務員制度改革というのは、一九六二年ごろに第一次臨時行政調査会で話合いが持たれまして、このときにも既に国家公務員の公務の民主的で能率的な運営を保障するが、公務員の現状は相当懸け離れているという、そういった指摘がありました。そのころから人事管理の確立や能力主義、実績主義、信賞必罰を励行、退職後の再就職あっせん一元化ということは答申に出されていたわけでございます。  それで、第二次臨調を経て、一九九〇年に省庁再編などの道をも付けて、そしてこの一括管理システムの動向を見ながら一括採用は検討しようじゃないかということで、しかも人事慣行についてもこれはどうすべきかという、そういった議論がなされてきたわけなんです。ようやく二〇〇〇年の十二月の行政改革大綱で公務員制度改革が重要課題となって、二〇〇一年にこの公務員制度改革大綱ということに正式につながってきたわけなんですけれども、非常に長い歴史があるわけなんです。  先生方の方がずっと我々よりよく勉強されておられますんですけれども、先ほど話がありましたけれども、それは私も思うんですけれども、この能力等級別について考えると、現在の公務員法第三十三条一項にもこう明記されています。すべての職員の任用は、この法律及び人事院規則の定めるところにより、その者の受験成績、勤務成績またその他の能力の実証に基づいてこれを行うと。国家公務員法第七十二条には、勤務成績の評定として、職員の執務について、その所轄庁の長は、定期的に勤務成績の評定を行い、その評価の結果に応じた措置を講じなければならないと明記されているわけなんです。  だったら、やろうと思えばできたはずなんですけれども、先送ってきた、運用されなかったと。こういう歴史があるんですけれども、今回、なぜかちょっと違うなと思うのは、具体的に安倍総理がパンドラの箱を開けてしまったという感じを受けているんです。だから、私は、慎重という言葉を使えば、これは優柔不断と取られてしまうなということは思います。そして、検討という言葉を使っていけば、こいつはやる気がないなということを受け止めてしまうと、これだけの歴史を繰り返していますので。  私、このことにつきまして、一体どういうように、過去の、繰り返し繰り返し試行錯誤してきて、今も人事の、試行