活動報告

2009-04-14
第171回国会 参議院国土交通委員会 第9号

171-参-国土交通委員会-9号 2009年04月14日 ○長浜博行君 この委員会にも尊敬すべきベテランの先輩方もいらっしゃるわけですが、やっぱりそれ一つ一つの法律がいつ作られてどういう経緯で続いてきたのかというのは、やっぱり政治家として勉強していかなければいけない部分があると思っております。  久しぶりに本を開きまして、その本で序にかえてというところで、水は低きに流れ、人は高きに集まる、世界各国の近世経済史は、一次産業人口の二次、三次産業への流出、つまり人口や産業の都市集中を通じて国民総生産の拡大と国民所得の増加が達成されてきたことを示している。これ序文でありますが、私は今年三月、永年勤続議員として衆議院から表彰を受けた、私はこれを機会に、国土開発・都市問題と一緒に歩いてきた二十五年間の道のりを振り返るとともに、新しい視野と角度と立場から日本列島改造の処方せんを書き上げ世に問うことにした、国民及び関係者各位の参考になれば大変幸せであるという、昭和四十七年六月に刊行された本でございます。  私が持っているのは、これ六月二十日が初版で八月二十一日の版でありますが、このわずか二か月の間で十二版重ねられた、田中角栄先生の「日本列島改造論」でございます。この書き上げられた一か月後の、六月にこれは出されて、七夕、七月七日に田中角栄先生は総理大臣に御就任をされるという状況になるわけでございます。  田中角栄先生が作られたこの法案、まさにこの法律でありますけれども、当時の状況は、道路がほとんどないし金もないという状況の中で、当時、つまり二十年を振り返られてこの本を書かれたわけでありますが、それから総理大臣になられるわけですけれども、一九五四年、議員立法で道路特定財源を導入したというのがこのスタートでありました。一番最初に申し上げましたように、揮発油税は四九年に既に出ておりますので、この五四年がいわゆる道路特定財源の一発目ということになってくるわけでございます。  それに先立つ二年前、一九五二年、昭和でいえば二十七年、このときに、この財源が必要となるであろうところの今使われている現行の道路法、道路整備の体系を定めたこの道路法も田中先生によって作られているわけでございます。そして五〇年代、この五四年に続いて五五年、翌年には地方道路税が創設をされ、五六年には軽油引取税が創設をされているわけでございます。そして六六年に石油ガス税が創設をされ、六八年に自動車取得税が創設をされて、そして七一年に自動車重量税が創設をされているわけでございます。こういう歴史を経て六つの特定財源が整備をされていき、それに伴っての日本の、まあ高度経済成長と言ったらいいんでしょうか、そういったつくられた日本のバックボーンになっているのがこの法律と言ってもおかしくないというふうに思います。  特に、七一年に自動車重量税がつくられたとき、田中先生は自民党の幹事長であらせられましたけれども、この理屈は、車は重いほど道路を傷つけると、重さに応じて取ろうというこういうアイデアの下で、このときの五か年計画では大体三千億円ぐらい道路財源が足りなかったと思いますけれども、これを重量税として現実のものとしていったわけでございます。  特に、この暫定税率を導入した七四年、七四年ということは昭和で四十九年、このときに暫定税率がスタートしていくわけでございますが、この当時のもちろん総理大臣は田中総理大臣という状況の中で、大蔵大臣は福田大蔵大臣であったわけでございます。  田中内閣は、七二年のさっき申し上げた七夕から七四年の十二月九日まで続きますけれども、その間に、今申し上げたような特定財源と表裏の関係にある、これは租税特別措置法に規定されているところの暫定税率というものが設けられ、それが今日まで延々と議論になっていることは、昨年の道路国会というかガソリン国会で御記憶にある方も多いというふうに思っております。  この暫定税率の問題はまた後ほど触れさせていただきますけれども、このある意味での道路特定財源というものが、いわゆる道路族というような呼び方をされる方々を呼び、そして建設業者との既得権益ということになり、そして議論の過程の中においては、余った道路財源の使途拡大、それから一般財源化と、こういうふうに議論が進んできて、この悩ましい法律が与党によって提出をされるという状況になってくるわけでございます。  ですから、悩ましいといった問題が、一番最初に申し上げましたように、こういう法案が、本来であるならば、政権交代をした後の状況の中において対立した概念を持つ政党から提出をされて議論をされるのであるならば、ある意味での、どう言ったらいいんでしょうね、議論のしやすさがあるのかもしれませんけれども、そうじゃない状況の中で提示されているところが今日の政治状況の大変複雑さ。去年を振り返ってみても、審議する委員会の連続性がないという状況にも生まれているのではないかな、これは私の私見でありますから、そういうことが行われてきたのではないかなというふうに思います。  特に、この暫定税率の導入をするときには、四十九年、先ほども申し上げましたように石油危機のさなかでありまして、こんなときに増税ということがどういう意味を持ってくるのか。特に暫定税率は、野党からの厳しい反対、道路を中心とする公共事業投資への固執であり撤回を要求するということで激しい議論がなされたわけでございます。  考えてみれば、先ほどの、この特定財源をつくるときにも大分議論がなされたようでありまして、ガソリン税を目的税として実施した法律で我が国の税制史上とりわけ意義の大きいものである、ところがこれに対して政府固有の予算編成権を拘束する目的税法は憲法違反であるとの論議が学界から提起された、しかし私は、私はというのは田中角栄先生ですが、そのような憲法違反論には問題にならないと考えて真っ向から違憲論に立ち向かった、二十七年の衆参両院、特に参議院ではこの問題について百日間にわたる長期論議が行われた、私はこの間の答弁をすべて一人で行い、結局法案は陽の目を見たということで、この特定財源の問題というのの財政硬直化の問題は当時からも指摘をされていたようであります。  今日は財務省からも来ていただいておりますが、この特定財源、一般財源化されるわけでありますが、財務省の立場としては財政の硬直性が解消されて喜ばしい話だというふうに、この当時の田中角栄論争の終止符を打つという状況の中で何か考えはございますでしょうか。 ○大臣政務官(末松信介君) 今先生から昭和二十四年から今日までの経緯の話も聞かせていただきました。  この道路特定財源制度というのは、もう先生が一番御存じのとおり、受益者に直接負担を求めるということは合理性があるということと、負担に国民の理解が得られやすいというそういう一方で、財政の硬直化をするおそれという、そういう弊害が出てまいりました。一方で、これまでの道路特定財源制度につきましては、戦後の荒廃の脱却とかあるいはモータリゼーションの進展という点への対応が求められる中、私としては、財務省としては道路整備に一定の役割を果たしてきたものというように考えております。特に、昭和三十五年のときには車というのは二百三十万台でしたけれども、四十数年たって平成十三年には七千二百三十七万台ということになっているわけでございます。  ただ、私自身、党で戦略的社会資本整備検討委員会というところの幹事に選任をされたことがあるんですけれども、日本というのは、一キロを、これは高速道路とかいろんな道路をひっくるめてですけれども、一キロを造るのに五十・一億円ほど掛かるということを教えられました。アメリカは十九・一億円、フランスは五・九二億円と。日本という地形というのがいかに道路を造っていく上で金が必要なのかという、その財源をどこに求めていくのかなということを、そのことをそのときに改めて実は考えさせられました。  そういう点で道路特定財源制度というのは大きな意味があったと思うんですけれども、しかしながら、先ほど金子大臣から話がありましたように、時代は大きく変わってまいりました。与党内においても一般財源化ということはここ二、三年大きく声が上がっていましたし、小泉総理からも平成十七年の十一月に直接的な指示が出たわけでありまして、そういう点を踏まえまして、今回、一般財源化の方向へ大きく踏み出すということに、平成二十一年度から、達したわけでございます。そのように理解をいたしております。 ○長浜博行君 この特定財源と暫定税率の問題というのは、ある意味では、今度は非常に時代が近くなって、それでももう既に八年ぐらい経過するんでしょうか、聖域なき構造改革を掲げ、平成十三年四月に発足した小泉内閣の閣議決定、今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針において、「道路等の「特定財源」について、税収を、対応する特定の公共サービスに要する費用の財源に充てることが、一定の合理性を持ちうるとしても、他方、そのような税収の使途を特定することは、資源の適正な配分を歪め、財政の硬直化を招く傾向があることから、そのあり方を見直す。」、こういう方針が出されて、二〇〇一年の小泉内閣から続く、これがちょっと、語弊があると問題がありますが、ちょっと変形をしたような形で道路公団の民営化になり、その後の安倍、福田、麻生と、こういう内閣続く中において様々な一般財源化の見直しができてきたわけでございますが。  やっぱり意味のある年数としては一九七四年、昭和四十九年の暫定税率導入のときで、先ほども申し上げましたように、野党の反対の状況の中において、総理大臣は田中角栄、大蔵大臣は福田先生ですか、やられている状況の中においての委員会質疑等においてこの暫定税率を、本則税率に匹敵するような暫定税率になっていくわけですが、必要性を強調して、先ほど申し上げました野党の反対討論に関して採決前の賛成討論を行ったのは、当時当選一回の小泉純一郎代議士が衆議院の大蔵委員会だったと思いますけれども暫定税率の賛成討論を行ったという歴史もありますので、なかなかこの道路財源の法案に関しては役者が交錯をしているというか、時代を超えながらそういった方々が存在をしていて、御承知のように自重税なんかに至っては、あれは、これもまた福田総理大臣のときの大蔵の政務次官は例のあの、何と表現したらいいんでしょうか、中川さん、あのローマの中川さんですね、中川さんのお父様が政務次官として答弁をされて、そして国会答弁によって特定財源が担保されているという不思議な財源、特定財源でもありますから。ですから、この特定財源の歴史というのは、国会の答弁も含めて大変、日本国の中に数ある法律の中においては、くどくなりますが、日本の経済的成長を遂げた光の部分と影の部分と、そういった重要な部分を担ってきた法案の修正という局面に私どもは今幸か不幸か直面をしているという状況での法案なのだということを御理解をいただければというふうに思っているわけでございます。  先ほど大臣が御答弁をされたというか、発言をされた中において、今回の地方に直入分七千億を廃止をすることによって新たなる交付金が誕生したということになってくる議論がありました。あれは私も覚えておるんですけれども、麻生総理大臣ですね、一番若くなったというか、年代が近くなった現職の総理大臣がこの歴史的意義のある法案の修正をするという状況の中において直入部分を廃止をする。御承知のように、補助金や何かは特定財源ではありますけれども、一般会計に入ってそれが地方に振り分けられるとしますが、この臨時交付金の部分は四分の一直入という状況の中で廃止をして、そして新たなる地域活力基盤創造交付金という形の議論に収れんする前ですね、たしか記者会見だったと思いますが、テレビの画面を見て、記者とのキャッチボール、地方が自由に使える財源をこれからつくるんです、一兆円です、クイズのように麻生さんは得意げに記者に向かって、それは何ですか、そうすると記者さんが、多分それは交付税ですと、こういうふうに答えたんだと思いますね。そうしたら、そのとおりと言って格好良く画面から去られていった、そんなところを思い起こすわけでございます。  前回も議論に出たところでありますけれども、これは一般財源であって、このスキームはどのように考えられたと言っちゃおかしいんですが、国土交通省と財務省はこの交付金をどのように見ておられるんでしょうか。 ○国務大臣(金子一義君) 麻生総理が記者とのキャッチボールをされていたのを、私もあのテレビを拝見をしておりました。こういう、総理が地方交付税というのをおっしゃるのも、ある意味、地方に財源が非常に枯渇をしているということが大きな要因だったんだろうと思います。私も国土交通大臣やって、そして、国がお金を出す、これだけじゃ地方の公共事業はなかなか進まない、地方の財源も併せて工夫してあげなければなかなか前に進まないという状況、そういう中で麻生総理が地方交付税一兆円という御発言だというふうに理解しておりました。  ただ一方で、私の立場で、それで本当に必要な道路というものが、地方自治体が取り組んでもらえるんだろうか、地方自治体の御意見もやっぱり聞いてみたいと。地方交付税、これは何でも使っていいわけですから、実に自由裁量というのは持ちますけれども、一方で地方自治体の皆さんからもお話を伺っていますと様々な意見が出てまいりまして、やはり、結果としてこういう新交付金になりましたけれども、道路を造るという枠組みとして一定のものを造ってもらいたいという声もありました。これは与党で、どういう枠組みがいいかということも含めて改めて検討していただいたという経緯がございます。 ○大臣政務官(末松信介君) 総理の当時のこれ、平成二十年十一月の二十日のこのぶら下がりの会見、先生から事前に通告をいただいておりましたので拝見しました。当時、あのときも、我々の議員仲間等も、これは地方交付税を一兆円なのかあるいは別枠として一兆円なのか、これはもうその日一日そういう話で明け暮れたことを覚えております。  ただ、総理の頭の中には常に地方の道路整備が遅れているということがやっぱり念頭にあると同時に、今回、暫定税率をずっと維持していくに当たって、節目節目のときに地方の財政が厳しいということを常に感じておられます。そういう点等々を考える中で、地方に何とか道路の整備もできる形で、しかも財政支援ができる形でというところ、そういう意味合いというものがああいうぶら下がりの記者会見になっているんだなということを、そのように私なりに理解をいたしているところでございます。  総理から指示を受けまして昨年の十月の三十日に政府・与党から決定されました生活対策におきまして、道路特定財源の一般財源化に際しましては一兆円を地方の実情に応じて使用するという新たな仕組みをつくったわけでございます。総理の趣旨を踏まえまして、与党における一般財源化の検討に際しましても、この新たな仕組みについて検討がなされているところでございます。  地域活力基盤創造交付金、もう大変言いにくい表現ですけれども、この九千四百億円というのは、臨交金がなくなりましたんで、インフラ整備とかソフト事業を含めて地方の実情に応じて道路の事業以外にも使っていけるように、地方の裁量というものをできるだけ、地方に合ったものにできるだけ当てはめていけるような、そういうものとして用意をいたしているところであります。そのように私なりに理解をいたしているところでございます。